7話 姿無き訪問者ー02
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アレ?おかしいな。何で誰もいないのにドアが開いたんだろう。
僕たちは、数秒間無言でドアを見守ったが、誰かが入ってくる様子もない。
そして、結局誰も通らないまま、開いた時と同じように、ひとりでににドアはギギギと閉まった。
ドアに刻まれた赤い筋が、嫌な感じに栄えた。
………もしかして英知がやったのか?
僕もまだ知らない、そのなんらかの【能力】をもってして。
そう思って英知の方を見るも、その表情からは何も伺う事は出来なかった。
今の出来事に驚いているようにも見えるし、全く動揺してないようにも見える。
結局、見た目からは何も分からない。
…………………もう少し、観察力を鍛えた方がいいな、僕も。
なら、頴娃君が?
でも一人が二つの【能力】を持つなんて事は無い筈だ。
僕の知る限りでは、だけど。
顔を正面に向け直すと、ちょうど頴娃君と視線が合った。
「茉莉さんがやった…………………のでは無いようですね。という事は、英知さんでしょうか。だとしても、今の一連の動作にどういう意味があるのか、全く見当が付きませんが、何かを外に出す訳でもなく。何かを中に入れる訳でもなく。どうなんでしょう、英知さん?」
口調から判断するに、どうやら頴娃君でもないらしい。
となるとやっぱり英知か?
「さぁな。俺がやったとは限らないし、例え俺がやったとしても、お前に教える義理はないな。」
「とはいえ、消去法で、貴方しか残らないんですよ。」
そこで一つ大きなため息をつく頴娃君。
「……………分かりました。そんなつもりは無かったんですが、少々痛めつけないと、貴方は分からないようですね。」
ぶらり、と力なく垂れ下がっていた腕を、ゆらゆら、とどこか頼りなく上げていく頴娃君。
本がだんだんと鈍く光りだす。
頴娃君の腕と連動して、恐竜の骨の足の部分が、振り上げられる。
それを見ても、英知は眉一つ動かさない。
いやいや!!そんな余裕かましてる場合かよ!!
英知って怒ると以外と頑固なんだなぁ。
とかそんなのんきな事を考えてる場合じゃなく。
…………………本気で不味いな、どうしようか、コレ。