5話 頴娃の能力(改)
「で?何が聞きたいんだよ。」
警戒を続けながら、英知が聞く。
「回りくどい話も結構好きなんですがね、今回は単刀直入に聞きます。……………貴方達のどちらかが、【此処】を作っているんですか?」
―――頴娃君もすでに気付いていたのか。
「【此処】?作る?それは何の事だ?」
あくまで知らないフリをする英知。イニシアチブを取りたいのだろう。でも――
「無駄ですよ。貴方だけならいざ知らず、今ここには茉莉さんもいるんですから。」
「ちっ!!全くめんどくさい【能力】だな!!」
ん?
英知がめんどくさいと言った瞬間、頴娃君の顔がわずかに歪んだ。
気がしたが、直ぐに何事もなかったかのように話を続ける。
「さぁ、無駄だと分かったら、いい加減話してください。【此処】の構成に関係しているのか、いないのか。」
「してねぇよ!!大体そんなのわざわざ聞かなくても、それこそお前のその忌々しい【能力】で探ればいいだろうが!!」
「いちいち五月蝿いですね!!貴方達は馬鹿みたいに、ただ僕の質問に答えていればいいんですよ!!」
怒鳴りながら、本を振り下ろす。
それに呼応して、恐竜の右足が、僕たちから、そう離れていない位置に振り下ろされる。
圧倒的に有利な立場の筈の頴娃君は、しかし英知の言葉に過剰な反応を示す。
自分の【能力】を馬鹿にされるのがそんなに嫌なんだろうか?
「………馬鹿にされるのが嫌なのではなく、分かったような言い方をされるのが嫌なだけです。…………………何も知らないくせに。」
「分かったような、言い方?」
………………アレ?その前に、今僕喋ったかな?
何かさっきから、僕の考えた事に頴娃君が反応しているような……………いや、気のせいか?
「あぁイライラしますね!!その鈍さ!!もしかして僕を怒らせる為にワザとしてるんですか!?」
「いや、え?どういう事?」
「だからっ!!…………………だから!!ああもうめんどくさい!!僕の能力は【人の心を読む】事です。」
「だからそれは…………………知ってるよ。」
感情が見えるという話だった。
「違いますよ茉莉さん。…………鈍いのもそこまで来ると、罪になると知るべきです。」
語尾には僕に対する苛立ちが、色濃く出ていた。
何が、何でそんなに…………………もしかして、信じたくないけど、そういう事なのか?
そうして頴娃君は、僕が気付いたという事を読みとり、冷酷な笑みを浮かべ、ダメ押しのように宣言した。
「そうですよ、前に言ったのは嘘です。僕は…………人の思った事をほぼ完全に読む事が出来ます。」