3話 太古の意思ー02
「頴娃!!てめぇ!!このでかぶつを今すぐ退けろ!!」
立ち塞がる骨を指差し、怒鳴る英知。
今にも頴娃君に掴みかかりそうな勢いだ。
「おっと、動かないで下さい。僕は別に、あなた達に危害を加えるつもりはありませんから。」
対照的に頴娃君は、あくまでも冷静に返事をする。
「うるさい!!退けろっつってるんだ!!」
英知が、ここまで感情をむき出しにしている所を見るのは初めてだ。
「だから、質問に答えてくれたらいくらでも通してあげますよ。」
聞き分けの悪い子供に諭すように、平坦な声で黒衣の少年は告げる。
「っっ!!」
口で幾らいっても無駄と判断したのだろう。
僕が止める間もなく、英知は頴娃君に向けて駆け出した。
それを遥かに超える速度で、僕たちの頭上を越えて行く巨大な骨。
…………おいおい、あの大きさでなんて速度だよ。
…………………………まいったなぁ。
ますますこの状況を切り抜ける確立が下がってしまった。
あと20歩という所で、英知は行く手を塞がれた。
「くそっ!!!」
「うふふふふ。そろそろ質問に答える気になりましたか?…………なんなら、このまま踏み潰して差し上げても構いませんが。」
身体を流れるように揺らし、頴娃君は言った。
間違いない。
今、手に持っている本が光った。それも、先程までよりもかなり強い光だった。
おそらくあの本が、骨が動いている事と何か関係しているのだろう。
…………なんとか、あの本を手放させる事が出来れば、あるいは。
どうする?
頴娃君の意識は、完全に英知の方へ行っている。
このまま静かに近付いていき、奪ってしまうか。
距離的には…………………きわどいが、やってみるしかないだろう。
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視界に入らないよう、回り込むように少しずつ移動していく。
じりじりと、出来るだけ音を立てないように。
英知は、途中で僕の意図に気付いたようで、激昂したフリを続けながら、頴娃君の注意を引いてくれている。
いいぞ、もう少し。
もう少しだけそのまま頴娃君を引きつけておいてくれ、英知。
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よし、頴娃君の背後についた。
このまま一気に走り込もう。