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17話 不信と信頼とそれ以外の何か

「何の話をしているんだい?」


前触れも無く、

気配も無く、

唐突に、栞が現れた。


僕はもちろん飛び上がりそうになったが、意外なことに、不意を付かれたのか、英知も驚きを隠せないようだった。

しかし直ぐに平常心を取り戻したようで、冷静に栞に対処した。

その胆力をちょっと分けて貰いたい。


「…………栞か。何でこんな所に?」


「おいおい、おかしな事を聞かないでくれよ、英知君。ここは食堂だよ?共用施設じゃないか。私がいる事に何の不自然がある?」


「………ずいぶんと遅い昼食だな?もう四時になるぞ。」

ちらと腕時計を見て言う。もうそんなになるのか、千鶴子さんを見つけてから。

時間の流れを、今日は格別早く感じる。


英知の言葉を受けて、栞は若干あきれた様な顔をして応じる。

「そんなの私の勝手じゃないか。今日は少し用事があってね、遅い昼食になってしまった。それに何を根拠に昼食と決め付けたのか知らないが、四時なら晩飯の可能性も考慮して然るべきだと思うが。君らしくもないね、「探偵君」?」


最後の探偵君というのは皮肉だろう。

その後も二人は、聞きようによっては口喧嘩ともとれる会話を交わしている。

今まで気付かなかった―――というか気にも留めてなかった―――が、この二人、実は仲が悪かったりするのだろうか?


それにしても。

少し用事?千鶴子さんが居た部屋の前で会った時は、散歩とか言ってなかったか?

それに。

それに、よく考えてみると先程の鍵の件は不自然すぎる。

よくは見えなかったが、あの鍵にはタグのようなものは付いていなかった。それなのに栞は、何故持っている鍵を、あの部屋の鍵だと断言出来た?

さらに、拾ったというのもやはり疑問が残る………気がする。

というよりはむしろ、あの部屋の鍵は栞が掛けたんじゃないのか?


そのまま加速しそうになる思考を、中断させたのは栞の声だった。

「ちょっと茉莉君。どうして英知君がこんなにピリピリしているのか、教えてくれないか?」


「………え?…………それは。」

なんだろう、何て答えればいい?


「別に機嫌が悪いわけじゃねぇよ。そんなに穿って見るなよ、栞。」


言いよどむ僕の変わりに答える英知。対して栞は浅く溜め息を吐き、

「…まぁ、いい。ところで君達は、さっきからいったい何をやっているんだ?」

と言った。


そうか。栞にはまだ聞いてなかったか。あの時はドアの鍵の事で頭がいっぱいだったから。

「………鞘香さんを探してるんだ。何処にいるか知ってる?」

僕がそう言うと、栞は無反応――かどうかは分からないが、僕から見れば感情の変化は伺えなかった――だったのに対し、何故か英知に睨まれた。


「なんだ、それならさっきそう言ってくれれば良かったのに。」


視線を栞の方に向け、どこか投げやりな口調で英知は言う。

「で、何か知ってるのか?」


「図書館に入って行くのを見たよ。」


ピク、と眉を動かしてさらに聞く。

「それは、いつの事だ?」


「そうだな。確かアレは、今日の、十一時くらいだった。」


「十一時?……………そうか、ありがとう。よし、行ってみよう茉莉。」

言うが早いか、さっさと歩き出す英知。

僕は慌ててその後を追った。


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