16話 英知の考察ー03
「大丈夫か茉莉!?精神を強く持て!!自分の意思を持つんだ!!」
自分の、意思。意識。意思。
「無理矢理にでも一度気付いて―――【認識】して―――しまえば、拘束は緩まる筈だ。俺がそうだったように!!だからしっかりと自分の意思を持て!!」
――――――――――意思を、
考えるのが恐い。
―――――――――【此処】は、
分からない事を考えるのが恐い。
――――――――――だから、
新しいことを知ることが恐い。
――――――――――僕は、
今有るものに満足していればいい。
――――――――――――――――――――僕は!!
「…………なるほどね、意思を強く持って、【認識】する、ね。」
自分を縛っていた見えない鎖が、一つ切れるのが見えたような気がした。
僕を見ていた英知は、一つ大きな溜め息を吐いて言った。
「お前なら大丈夫だと思ってたよ。さぁ、早く食べないと冷めちまうぞ、カルボナーラ。」
話の内容が衝撃的過ぎて、英知に言われるまで、すっかりカルボナーラの存在を忘れていた。
フォークを回してこぶを作り、口に運ぶ。
すっかり冷めてしまっていたが、何だか無性に美味しかった。
「…………コレも、誰かの【能力】なのかな?」
英知は英知でサラダにドレッシングを掛け、レタスを3枚程一気に頬張る。
「おそらくな。一人の能力なのか二人の能力なのか分からないけど。」
「精神的拘束と肉体的拘束を別々に担当してるって事?」
「ああ、出ないと、負担が大きすぎる。それ以前に、その二つは似てるようで全く種類の違う【能力】だから、一人で拘束してるなんて、物理的に考え難い。…………まぁ、滅茶苦茶力の大きな【能力者】がいるって考えも捨てきれないが。」
「そんな絶大な力を持つ人がいたらどうしようもない気がするけど………」
「まぁそんなに暗い顔すんなって。さっき言ったように、その確立は低いと俺は踏んでいる。それに、もし仮にそんな奴がいたとしても、付け入る隙はあるさ、俺たちがいい例だ。」
「付け入る隙、ねぇ。僕は、なんていうのかな、君のお陰で、偶然、大丈夫だったけど、全員が全員呪縛から抜けられるとは限らないと思う。」
「まぁな。けど別に全員が抜ける必要なんて全然ないぜ?そんな事をするより、俺とお前で犯人を捕まえればいい。」
「んな無茶な。」
「無茶じゃないさ、俺たちはもう、考える事が出来るんだからな。」
「知は力なり、って?」
「そうだ、分かってるじゃないか。」
わからいでか。
「………それにしても、せめてあと一人くらい味方を増やした方がいいんじゃないか?」
「駄目だ。誰が犯人か分からない以上信頼出来ない。それに、そんなに時間も残っていない気がするんだ。」
「何の時間?」
僕がそう聞くと、
「………………………そうだな。有り体に言えば、俺たちに残された時間、かな。」
本気なのかどうなのかよく分からない口調で、英知はそう言った。




