15話 英知の考察ー02
「おそらく俺の予想では、【此処】にいる俺たちは、二種類の拘束を受けている。」
英知に言われて、始めて出入り口が無いという事を知り、いや気付き、呆然となる僕に、英知はさらに言葉を重ねて来た。
二種類の拘束。
拘束とは、どういう意味だろうか。言葉のまま捉えるなら、【此処】から出れないように拘束されているのだろうか。
………だとしてももう一つは?
僕の顔をやはり何処か心配そうに見ながら、英知は言葉を続ける。
「二種類。つまり、肉体的な拘束―――――お前に今言った通り、【此処】には出口が無い。だから俺たちは【此処】に知らぬ間に拘束されてしまっている。―――――、それと、精神的な拘束だ。」
「精神的な、拘束?」
「ああ、さっきの反応を見た限り、お前俺に指摘されるまで、出入り口の事なんて考えた事もなかっただろ?」
確かにそうだ。英知の言う通り、気付かなかったし、考えた事もなかった。
「それが精神的に拘束されている状態だよ。」
「いや、いや、待ってくれ、待ってくれ、よく分からない、というより、頭が付いて行ってない。」
「………そうだな、例えばもう一つ、【そもそも【此処】はドコなのか?】って考えた事は?」
「…………………それも、ない。」
「そういう事だ。つまり、俺たちは思考を縛られている。何かを考えたくとも、まず問題点に至れないように。」
「問題点に……至れないように。」
「ああ、誰か分からないが、こんな事を仕組んだ人物にとって、都合の悪いことを知られない為に、だろう。」
そんな、そんな。僕は。【此処】に来てから一ヶ月にもなるのに。
その間何の疑問も抱かず、この閉鎖された空間で暮らしていたのか。
何の疑問も抱かず、【此処】などという不安定な言葉で満足して。
僕だけじゃない、他のみんなも。
……………待てよ。
そもそも何故僕は今【此処】にいる?
どうやって?
どういう経緯で?
どういう理由で?
ああ、分からない。何も分からない。
何も、分からなく成ってしまった。