14話 英知の考察ー01
僕らは一階の食堂へ来ていた。
そういえば昼飯をまだ食べておらず、それなら説明がてらついでに………という事だ。
僕の目の前にはカルボナーラ、対面の英知の前にはサラダが置かれていた。
「ん?そんなちょっとでいいのか、英知?」
「ああ、俺はもう食べてるから。」
「ふーん、悪いな。」
「いいって、ゆっくり食べろよ。それにどうせ説明にも時間がかかるだろうし。……それで、本当にもう身体は大丈夫なのか?もしも【代償】だったら大変だからな。」
「うん、大丈夫だ。有難う。」
それに、なんとなくだがアレは、【代償】とは関係がない気がする。
そう、ただ、昔の事を思い出して気分が悪くなっただけだから。
「そうか………なら、説明を始める前に、いくつか確認する事があるから答えてくれ。」
確認する事?なんだろう?
僕は頷き、英知の次の言葉を待つ。
「まず一つ目、お前にはさっきの屋上の風景はどういう風に見えた?」
人差し指を立てながら英知が訪ねた。
「どんなって、お前も見ただろ?とにかく真っ白だよ。ただただ真っ白なんだ。何も無い。そう、何も無いという表現がしっくりくるかな。」
英知はふむ、と少し考え、中指を立てて、言う。
「次に二つ目、お前が倒れた事と、その何も無い景色は関係があるか?もしくはあると思うか?」
どうだろう。アレは【代償】では無いと思うが、あの白い景色のせいで思い出したのだから………
「無くはない………かな。これは僕の感覚、というか感想みたいなものだから、言わないでおこうかと思ったけど、アレは多分【代償】とは関係がないよ。」
「三つ目。俺が【認識】しろと言った後、空はちゃんと青く見えたか?」
薬指を立てながら言った。
「それが一番僕には不思議なんだけど、見えたよ。今まで確かに真っ白だった筈なのに。いつの間にか青くなってた。」
英知は頷いて小指を立てる。
「四つ目。自分の言動を誰かにむりやり捻じ曲げられたと感じた事は?」
急に質問の傾向がえらく変わったな。まぁもちろん答えるんだけど。
………考えを、捻じ曲げる?どういう意味だろう。そのままの意味なら、そんな事はないと思うが。
「ない………と思う。」
「そうか。」
英知は何やら少し難しい顔をした後、親指を立てて言った。
「五つ目。これが最後で、一番重要な質問だ。」
そこで英知は一度言葉を溜め、何故か心配そうな顔をした。
意味が分からなかったが、僕は先を促す意味で首を縦に振った。
「―――茉莉、お前、【此処】に出入り口らしき物が一切無い事に気付いているか?」