11話 屋上へ
廊下の端に隠れるようにして、その梯子はあった。
壁から鉤型の鉄棒が連続で飛び出している。
学校の側面とか、煙突の内側とかに着いているアレだ。
行き止りのように見える壁の右側に、ほんの少しだけスペースが有り、そこに隠れるようにそれは有った。
そのスペース自体も、全て影になってしまうほど小さい。
普通に生活している限りでは、こんなもの見つけられないだろう。
二階への階段の時も思った事だが、コチラはますます「隠し」って感じだった。
「……よくこんなの見つけたね。」
「ああ、俺って探検好きだから、コレを見つけた時は燃えたぞ!!」
その気持ちは分からなくもない。
「……これ、本当に大丈夫なのか?めちゃくちゃ錆びてるけど。」
「だーいじょうぶだって!!前上った時も何とも無かったし。心配なら俺が先に上ってやるよ。」
無言で先を譲る。
英知はああ言うが、正直凄く不安だ。一応下で受け止める準備をしておこう。
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ひょいひょいと、軽い身のこなしで、何の問題もなく上り終えた英知が、速く来いよ、と上半身を覗かせて呼ぶ。
やはりあまり気が進まない。
が、いつまでもこうしていても仕方がないし、屋上に興味が無い訳でもないので、自分の身体を前に押し出した。
握った先から、ポロポロと錆が落ちていく。
今すぐにでも折れてしまいそうだ。
ぐ、やっぱり止めようかな。何で英知は平気なんだろう。
やれやれ、下りる時の事を考えると気持ちが沈むなぁ。
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いつ落ちてもおかしくないと、正直気が気ではなかったが、無事に上り終えた僕を、英知と扉が迎えた。
重厚な金属で出来ており、他のドアの悠に二倍はあるだろう。
城門の小さいバージョン、というイメージだった。
屋上は、何か特別な場所なのだろうか?
「ほら、開けてみろよ」
と場所を譲る英知。自分は前に開けているから、という事だろう。
思っていたよりもずっと軽い力で、その両開きの扉は開かれていった。