9話 探索ー03
「ああぁぁあああ!!」
千鶴子さんがいきなり叫んだ。
考え込んでいた僕は、びっくぅ、と飛び上がってしまった。
やばい、またからかわれる。
と思ったが、千鶴子さんはそれどころでは無いらしく、
「ちょ、ちょっと!!今って何時なの!?」
と慌しく英知に聞いた。
腕時計を覗きつつ答える英知。
「んーと、一時……半。」
「正確には!?何分!?」
「27分。」
それを聞いた千鶴子さんは、ますます焦ったように言う。
「ごめん!!私もう行くね!!鞘香ちゃん見つかるといいね!!」
慌しく出て行ってしまった。何だっていうんだろう。
うーん、きっと【能力】か【代償】に関係があるのだろう。そう理解する事にした。
「よし、じゃ、行くか。2階もあと少しだ。」
――――――――――
次のドアを開く。
部屋を見回しながら、前から疑問に思っていた事を、ふと思い出したので聞いた。
「あー、そういえばさ、始めてあった時、何であんな話し方してたの?」
「あんな話し方?」
どうやらこの部屋にもいないようだ。あと残りは………3部屋か。そういえば屋上があるとか言ってたな。
「っていう事はアレだよ。ってやつ。」
「あーアレな。アレは、その時はまってた本に影響されてさ。主人公の探偵の口癖だったんだ。」
…………どんな小説だろう。そんな口癖の探偵はちょっといやだ。
「ふーん。英知って時々急に変な喋り方するけど、それも本に影響されてだったのか?」
「そうだよ。…………………変っていうな!!」
「いやだって変だし。例えば、そうだな……………【最後に】って何だよ。セリフの最初にいちいち【最後に】っていうのおかしいだろ?」
「おかしくない!!それがかっこいいんだよ!!」
「……意味が分からないって。【最後に、よう茉莉!!】って言われた時は焦ったよ。何となくスルーしたんだけど。」
「おかしくないって!!…………てか、おかしいと思ったんならスルーするな!!」
「ん、いや【代償】かと思って。聞くのは悪いかな、と。というかさ、どんな小説なの?それは。」
「推理小説だよ。」
「え!!もしかして探偵の口癖?」
「そうだよ。決め台詞の、【最後に貴方が犯人です!!】っていうのは痺れるぜ!!」
「…………」
英知の性格が、少し分からなくなってしまった。