11話 茉莉と栞ー06
「○○やら○○ったみたい○○。と○○○け○、僕が木○ま○す。よろしく○、茉莉く○」
まさに僕たちを見ていたようなタイミングで、木霊君が声をかけてきた。
何と言われたのかはっきりとは分からなかったが、「茉莉」と呼ばれた事と、目の前に差し出された手を見て、僕も挨拶を返した。
「こちらこそ、よろしくお願いします、木霊君。」
「あーおい!!木霊てめぇ!!まだ話はついちゃいねぇぞ!!」
出された手を、僕が握り返そうとすると、それを―――おかしな表現だが―――邪魔するかのように亜空が割って入った。
「と○○か○、○く○く○。は○しがつく、つか○○○前○、僕は別○君とけ○かして○るつもりは○○○○け○。」
栞がぼそぼそと、すぐに木霊君の言葉を補填してくれた。
「というかね、亜空君。話がつく、つかない以前に、僕は別に君と喧嘩しているつもりは無いんだけど。」
「おーし、よく言った!!そこに直れ!!」
亜空の様子を見て木霊君は、溜め息を大きく一つ吐き、僕たちの方を向いて言った。
「やれやれ、気が進ま○○○もほ○が○るが、○○やら僕は、○く○く○○○○て○し○ければ○ら○○よ○○。またこ○○、ゆっくりとは○してみた○も○○○、茉莉く○。」
「やれやれ、気が進まないにも程が有るが、どうやら僕は、亜空君の相手をしなければならないようだ。また今度、ゆっくりと話してみたいものだね、茉莉君。」
栞がやはりぼそぼそと訳してくれる。正直、ありがたい。
そうして、自己紹介もそこそこに、木霊君との邂逅は終わった。
【言霊の部屋】を出て、次は約束通り【映写室】に行こうという話になった。
千鶴子さんは…………
頭がぼーっとして。
アレ?話をしてたから千鶴子さんが来たのか?
…………………いや、違う。コレは。
自分の意思とは関係なく、ぐらりと体が傾ぐ。
「ちょ、茉莉君?」
心配そうに顔を覗きこんでくる栞。
「……………」
………まずい、コレは。
「茉莉君!?おい!!誰かいないか!?ちっ!!コレだからこの建物は!!人が少なすぎる!!ちょっと待ってろ茉莉君!!すぐに誰か呼んでくるから!!」
たったった、っと離れていく足音を聞きながら、僕の意識は薄れていった。
―――――こうして、僕の【此処】での一日目、もとい七日目は幕を閉じた。