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10話 栞の講義ー06

「次に、木霊君の【代償】だが、【前日に使用した能力の量に比例して、伝えられない言葉が増える】事だ。


ふふ、まぁ分からないだろうね。例を出しながら説明しよう。


まず始めに彼が言った言葉は「○から、○○○○ってさっきから○ってる○ろ○?」だが、コレは本来、「だから、何だいってさっきから言ってるだろう?」となる。


ああ、まぁ驚くのも無理はない。でも、心配しなくても、慣れればこのくらいは普通に出来るようになるよ。言葉は確かに聞こえないが、口は動いているから、それをよく見ていればいい。それプラス、彼の【代償】の法則を知っていれば、復元はさらに容易になる。


同様に、次の、「ト○レに○こうと○もって○。それに、○こに○よ○とそ○○○僕の勝手○ろ?」は、「トイレに行こうと思ってね。それに、どこに居ようと、そんなの僕の勝手だろ?」となるが、この最初のト○レは、あきらかにトイレだろう?このことから、彼が今日「あ行」を使えない事が………っと、ああすまない。言うのを失念していた。彼が伝えられなくなる言葉は、常に【行単位】だ。


だから、最後の「別に○○よ。隠して○る○け○も○○し。それ○○ずれ○や○も○かるこ○○し。」は、同様に「別にいいよ。隠している訳でも無いし。それにいずれ嫌でも分かる事だし。」となる。したがって、彼が今日伝えられなくなっている言葉は、「あ行」「だ行」「わ行」「な行」だと分かる訳だ。


…………あはは、そんなに不安そうな顔をしなくてもいいよ。


………ふむ。彼が昨日何をしていたのか少し気になるね。普段はこんなに失う事はないのに。」



「まぁともかく。彼ら二人の【代償】が分かっていれば、さっきの現象は容易に説明できる。つまり、


1、トイレに行こうとしていた木霊君が、ドアの前に立っていた。というか、ドアをまさに開けようとしていた。


2、そのタイミングで、ちょうど私たちが来て、亜空君がドアを開けた。


3、ドアを開けたのはいいが、亜空君は、彼自身の【代償】のせいで、木霊君の姿が見えなかった。私たちは、亜空君の影になっていて見えなかった。


4、対して、名前を呼ばれた木霊君は、「何だい」と返事をした。もっともこれは「何だ」だったのかもしれないが。ちょうど【代償】で、全ての声が消えていたから、声は全く聞こえなかった。…………ふむ。一語まるまる消えるなんて、珍しいパターンだ。実に興味深い。


5、だから、………ん?ドアの目の前で名前を呼ばれて、冷静に「何だ」とは言わないだろう、って?まぁ普通はそうなんだろうけど、そこは木霊君だからね。彼はいつも冷静だから―――ほら、見てみるといい、あの2人、一見言い争っているように見えるが、実際に騒いでいるのは亜空君だけだろ?木霊君は受け流しているだけだ。どうせ彼の事だから、亜空君を適当にいなしながら、僕たちの話を聞いているんじゃないかな。


6、それで、彼の【代償】を思い出したのか、それとも訪ねて来たのが亜空君だと気付いたのかは知らないが、彼は少し大きめの声で「○から、○○○○ってさっきから○ってる○ろ○?」と言ったんだ。


以上、些細な点は違うかもしれないが、大まかな流れはこうだろう。これでQEDだ。」


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