1章 世界が狂うに至る経緯 1話 栞の講義ー01
「その現象は始めは【病気】と言われていた。「狐憑き」とか「イタコ」とか、そんなものの一種なのだ、と。実際、始めの内は、症状も大した事なかった。
病気―――まあ、実際そんなに単純に割り切れる問題ではないんだが、説明に便利だからここでは病気で統一するよ―――に罹った人間は、特殊な能力を発現する。そう、巷で言われている、いわゆる超能力の類だね。始めの数年の間は、それこそくだらない能力ばかりだった。
ん?聞きたいのかい?そうだな、あまり気は進まないんだが―――透視能力があるだの、浮遊できるだの、そういうくだらない、いかにも想像力の乏しい人間の考えそうな能力だよ。
で、だ。えーと、何て読むのかな、んん、まつり君?で、いいのかな?
ふん、そうか。私の日本語能力もまだまだ捨てたものじゃないようだね。そうそう日本語と言えばね、高校のテストで、僕は唯一日本語のテストで百点を取ったことがないんだよ。あの日本語のへタレ教師が本当に嫌な性格でね。いやぁ今思い出しても腹が立つ。ああいうのは死ねばいいんだよ。日本のためにも、ひいては世界のためにも。何が「ほら百点が欲しいなら、分かるだろ?少し捲くって見せてくれるだけでいいんだ。」だよ。ええぃ忌々しい。思い出すだに鳥肌が立つ。何であんなのが教師になるんだ。日本の政府はこれだから………
ああ、すまない。
思わず、君の存在を忘却していたよ。
気にしないでくれたまえ。ちょっと昔のトラウマを―――トラウマティック・エクスペリエンスを―――思い出して………
いやごめん、そこらへんに突っ込みを入れるのは止めてくれ。
や、や。違うよ。違う違う。ちょっと言ってみたかったから言ってみただけで。
ああ、だから違うんだ、
ちょ、ドSか君は。そんな事を言うのは止めてくれよ、恥ずかしいじゃないか。
コホン、では気を取り直して話を続けようか。
次は、その後の政府の対応だよ。君が真面目に歴史学の授業を聞いていれば、この辺の説明は省略できたんだけどね」