5話 広い部屋ー01
「っっええ!?」
部屋に入るなり、僕は素っ頓狂な声を上げてしまった。後ろで栞がくっくと笑っている。
間違えて外に出てしまったのか?と思った。
部屋の広さがありえない。図書館の時も確かにおかしかったんだけど、これは…………………。
開けた空間は、端がかすんでいて見えない。
見えないって、ここ室内、の筈、なんだけどなぁ……………。
部屋の中心――――――中心が何処なのか分からないんだけど――――――に、椅子に座って本を読んでいる男がいた。
部屋の余りの広さに、不安になって後ろを見ると、ちゃんとドアが会った。栞も相変わらず笑っている。開いたドアから見える廊下は、今までと何も変わらずに、ちゃんとそこにあった。
「お、ようこそ、【増減の部屋】へ。お前が茉莉って奴か?」
椅子に座って本を読んでいた男が、本から顔を上げて言った。
「あ、はい。茉莉です。よろしくお願いします。あなたが、亜空【あくう】さんですか?」
「ああ、そうだよ。あ、そうだ、始めに言っておくけど、敬語はやめてくれよ、気持ち悪いから。」
「ああ。分かった。」
「ところで亜空君、前に頼んでおいた物、できたかい?」
後ろから栞が言う。
「いや、まだだ。つーかできねーよ、あんなの。俺の力にも限界はあるんだぜ、当たり前だが。」
「そうかい?確か君、前に私に「俺に不可能はない」とか豪語してた気がするが。」
「あーあー、そうでした!!作ってやっから気長に待ってろ!!」
「ふふ。気長に、ね。ずいぶん弱気じゃないか、亜空君。」
「んだと!!弱気になんかなってねぇ!!分かったよ!!すぐに作ってやる!!」
「ああ、よろしく頼む。」
言いながら栞は、にやりと笑ったように見えた。