3話 マシンガントーカーー02
…………………ハーフか?それにしては、流暢に日本語を話す。
「少し落ち着きたまえ、フォリス【ふぉりす】君。」
「私は落ち着いているわ、あなた達がそうやって私の進路をふさいでいるからこうやって注意しているだけよ、だからすぐにそこをどいて欲しいなあと言っているのよ私は、ああそれと私の質問に答えなさいよそこのあなた、ほら黙ってないで、ちょっと無視しないでよどうしてそうやってみんな…………………」
「やれやれ。…………………茉莉君。彼女はフォリス君。ほら、挨拶したまえ。」
「あ、よろしく、僕は…………」
「僕は?あなた自分の事を僕っていうのね。あれね、【図書館の支配者】君と同じね。あの子って何だかちょっと暗いのよね。暗いイコール僕とかいう法則があったりするのかしら、ああでもそれは違うわ、私の昔の友達で…………………」
自己紹介も満足にさせてくれなかった。うぅむ、どうしたものか。
「え、と、…………………フォリスさん?」
「さん?あらあなた私の事をフォリス【さん】って呼ぶのね、いいわよフォリスで、そこの悪口女は別にして、私のことはみんな呼びつけにするの、だからそんな風に呼ばれたら気持ち悪いわ、あそうだところであなたの名前を早く教えてくれないかしら、あそういえば名前といえば…………………」
相変わらずもの凄い勢いで喋り続けるフォリス。栞は、悪口女と言われた時にピクリと眉を上げたが、後はどこか疲れたような顔をしていた。
…………………さて、どうしたものか。
「茉莉」
迷った結果、率直に名前だけを言ってみた。
フォリスに余計な情報を与えるべきではない、と判断したからだ。
「祭り?何が急に何を言うのかしらあなた、ここで祭りなんて一回も無かったけど、あもしかして私にだけだまってみんなでやったのかしら、そうやって私だけ仲間はずれにして、やんなっちゃうわねまったくいつもいつも、祭りなんてくだらないんだから、あれ私分かったそういえばまつりって人がここにきたんだよね、それがもしかしてあなた、そうよねそうよね、という事はああそうか字が違う、茉莉ねあなた、なるほどでもそれとこれとは関係ないわなんで私の進路の邪魔をしたのか聞いてもいいかしら、でも別に必ず答える必要はないと言っておくわ、でないと…………………」
いちおう目的は達した。でも彼女のマシンガントークは止まる気配もない。
助けを求めて栞の方を……………あれ?栞がいない。
「いつまでそこに立ってるんだ、彼女の言う通り、早く君もドアの前を退きたまえよ。」
ぐい、と腕を引かれる。何の受け身もしていなかったので、僕の体は簡単に彼女によって移動した。
「あらやっと分かってくれたのね、じゃあ急いでいるのでいったんここで、ではまた後でね茉莉」
彼女の話がやっと止まった。また後でっていうか、僕たちもその部屋に用があるんだけどね。
「ヴぉ…………………!!っぅむ!!」
その事を言おうとした僕の口を、栞の手が塞いだ。思い切り睨みつけられる。
フォリスが部屋の中に入っていくのを確認すると、手を離して僕の事を罵った。
「茉莉君。少しは空気ってものを読みたまえよ。せっかくフォリス君が黙ってくれたのに、何故また蒸し返そうとするんだい?」
「いやでも僕たちもあの部屋に」
「…………………」
無言で睨みつけられる。
…………………いや、普通に怖いんだけど栞さん。
やがて彼女は軽く溜め息をつくと、気を取り直したように言った。
「まさかフォリス君がここに用があるとはね。千鶴子君には悪いが、あの部屋は後回しにしよう。フォリス君のマシンガントークと、千鶴子君の悪ふざけを同時に相手にするのは、さすがに骨が折れそうだ。」