2話 マシンガントーカーー01
「着いたよ、茉莉君。」
ケロッとした声で栞が言った。
「え、あれ?君、怒ってたんじゃないの?」
「…………………誰に?」
「え?…………………だから…………………千鶴子さんに。」
「千鶴子君に?私が?何で?」
え?本気で怒ってないのか?
「いや…………………ついさっき。」
栞はしばらく考えた後、言った。
「…………………ああ。私があれぐらいで怒る訳ないじゃないか。演技だよ、茉莉君。」
演技!?演技には見えなかったけど…………………彼女がそういうのなら、そうなのか?。
「ちょっとどいてくれないかなあなた達、邪魔になっているって分からないかなぁ、本当にもう、あ実はわかっててやってるね、酷いなぁそうやっていつもみんな私にいじわるするんだね、あれそういえば見たこと無いねあなた。けどそうやって初対面なのに…………………」
…………………また、…………………変なのが。
…………………いや、訂正。また個性的な人物が現れた。
ここまでの経験から考えると、【此処】に居る人間は、それぞれに、かなり強い【能力】を有しているようだ。
【能力】が強いという事は、それだけ何かを【代償】として差し出しているという事だ。
まだこの人の【代償】も分かっていないのに、変な人、というのは失礼にあたるだろう。
凄い勢いで喋り続ける目の前の女性。文節の区切りが少し分かりにくい。
手を振り、足を振り、頭を振り。
…………………そんなに力いっぱい喋らなくても。何だか、見ているこっちが疲れてくる。
綺麗な金髪が、めちゃくちゃに揺れている。
青みがかった瞳が少々釣りあがっていて、どこか猫を連想させた。