11話 茉莉と栞ー04
ちゅるる、とスパゲッティをすすり上げ、ふと思い出したように栞が聞いてきた。
「そういえば茉莉君。ここに来て確か今日で一週間だけど、ここに来てからこっち…………誰と誰に会った事があるんだい?」
それに対し、僕は切り分けたハンバーグを口に運んだ後答えた。
「…………それは皮肉かい?栞。ここに来てからの時間のほとんどを、ベッドの上で過ごした僕に対する。」
フォークで貝を刺し、それを見つめながら応じる栞。
「いや。別にそんなつもりじゃなかったんだが。そう聞こえたのなら謝るよ。」
にんじんとパセリを、一度に口に運ぶ。
「まぁそうか。というか君も知ってた筈だから、そんな事聞かないか。」
水をごくりと嚥下し、栞が応じる。
「ああ、君の回復力には驚かされるよ。………さっき聞いたのは、そういう意味じゃなくてね、だから、誰か君の部屋に訪ねて来た人はいないか、と聞きたかったんだ。」
オレンジジュースをずずず、と飲み干し、
「………いや、君だけだ。」
と、少し考えて答える。
栞は、食事に使用したフォークを、ナプキンで拭いている。
鈍い光を放つソレの角度を変え、映り込む蛍光灯の光を眺めながら、栞が言う。
「ふむ。まぁ【此処】の人間は、基本的に自分の縄張りを大事にするからね。それも仕方ない、か。……………という事は、だ。」
そこで一度話を止め、コツ、と綺麗になったフォークを机に置いて栞が言った。
「君が会ってない人間は、あと3人だね。今日中に全員回ってしまおうか。」
言いながら、栞は僕の目を覗き込んでくる。大丈夫かい?と聞かれているような気がした。