8話 英知と茉莉ー01
「ところで茉莉、お前こんな所で何をやっていたんだ?」
そう聞いて来る英知。
「ああ、コーヒーをね、淹れようと思ってたんだ。」
「そっかそっか。でもお前がコーヒーメーカーと思ってたのは、通信装置だぜ?もう缶コーヒーでいいんじゃね?すぐソコに自販機あるからそれですましちまえよ。ああもしかして場所分からないか?だったら俺が案内してやるよ。ほら行こうぜ。」
そうだな。何も持っていかないよりはいいか。
「ああ、助かるよ。なら連れて行ってくれ、英知。」
「お、いいねぇ。呼びつけか。ますます気が合いそうな奴だ。」
「を、話はまとまった?私は先に部屋に行ってるから。」
と、熊。
「ああ、オッケーだ。それじゃ行こうぜ茉莉。」
「ところでさ、さっき彼女の声が、聞こえていた筈の声が聞こえなかったんだけど。」
「ああ、それか。それはな」
そこで少し躊躇う英知。
「……………まぁいいよなぁ話しても。鞘香は能力隠してる訳でもないし。いいよな?うん、いい筈だ。」
自問自答の結果、教えてもらえる事になったようだ。
「あのな、彼女の能力は――――――まぁ多分こっちはお前もある程度想像ついてるんだろ?――――――【物を創る】事だ。」
それは僕も何となく分かっていた。知りたいのは―――――
「それで【代償】だ、彼女の代償は、能力を使えば使う程、【存在感が薄くなる】事だ。最初は声が聞こえなかったのはその為だろう。その証拠に、一度認識した後は、普通に会話出来ただろ?」
なるほどね。だいたい把握できた。
「…………………さらに詳しい事を聞きたいなら、直接鞘香に聞いてくれ。…………さすがに気が咎めて来ちまった。やっぱり許可無く能力の事を話すべきじゃないな。」
「いや、十分だよ。ありがとう、英知。」
「あ?ああ、いいっていいって。お、ほら着いたぜ。さっさと買っちまおう。全部で4本か?半分出してやるよ。」
「いや、5本だ。栞がいる。いや、それはいいよ、僕が全部出す。さすがに悪いし。」
「ああ、栞がいるのか。いいって、遠慮するな。俺が三本分出してやる。ほら、360円。」
強引に押し付けてくる。始めの印象からは想像もつかないくらい、いい人だ。第一印象を簡単に覆す人を、僕は始めて見た。
「じゃ、ありがたく使わせてもらうよ。」