6話 【自称】発明家
「始めまして、茉莉と言います。貴方は、鞘香さんですか。」
いかにも疑わしげな目をして、睨まれる。
「…………………そうだけど。貴方さぁ。さっきこの【微妙にコーヒーメーカー型通信装置】を壊そうとしたでしょ。略して【びこつぅ】を!!」
…………………今度は通信装置か。色々つっこみどころがありすぎて困るなぁ。
コーヒーメーカー型にする意味は何なのか?とか、
通信装置なのに、その大きさだと持ち運びに不便なのでは?とか、
何でいちいち作ったものに【微妙に】とかつけるのか?とか、
僕が言うのも違うと思うが、後ろの男を無視していてもいいのか?とか、
そもそもそれをコーヒーメーカーと最初に言ったのは、千寿さんですよ?とか、
何で君の声がさっき僕には聞こえなかったのか?とか、
他にも考え出したらキリがない程の疑問点があるが、差し当たり一番気になった事を聞いてみる事にした。
「あの、君、その格好は何?」
「貴方に答える義理は無いと思うんだけどな。」
と、熊が言う。
いや、熊の着ぐるみを着た女の子が言う。
いやまぁ、答えなくてもいいんんだけども。……………できれば答えて欲しかったなあ。
仕方ない。それなら個人的に二番目に気になっていた事を聞いてみよう。
「なら、その、びこ…………えっと」
「【びこつぅ】?」
「そう、その【びこつぅ】もそうなんだけど、何でいちいち頭に【微妙に】って付いてるの?」
「…………貴方に答える義理は無いと思うんだけどな。」
駄目か。なら、もう一つ。
「【微妙に静電気発生装置】は、どうやって利き手を判断してるんだい?」
「あ、あなたアレ掛かったんですか!?」
急に嬉しそうな顔で聞いてくる(おそらく)鞘香さん。
掛かったっていうか、アレは始めは誰でも掛かるんじゃないかなぁ。
何の障害もない状態で、利き手じゃない方の手でドアを開ける人は、とても少ないと思うんだが。
「うん、掛かったよ。それで、どうやって利き手を?」
「……………………………………貴方に答える義理は無いと思うんだけどな。」
駄目だ。文字通り話にならない。