3話 混沌の部屋ー02
「コーヒーメーカーなら、確かそこの椅子の下に……………あら?見当たりませんわね。…………………なら多分こちらの【微妙に鍋型電子レンジの】中に……………ああ、ありましたわ。これですわミスター茉莉。」
手渡される。…………………なんでそんな所にあるんだろう。というか、場所を把握しているのが凄い。
それにしても、【微妙に鍋型電子レンジ】か。鍋型である意味がまったく分からない。
「水場は、廊下に出て左に15メートル程行った所にありますわ。ついでに私の分もお願いしますわね。」
「じゃ、行ってきますね。」
なんの躊躇いもなく、客人に淹れさせる辺り大物だな、この人も。
さっきから損な役回りだなぁ、と内心ぼやきながらドアを開ける。
「あ、ちょっと茉莉君。」
「っ痛ぅ」
忘れていた。そういえばこのトラップがあった。【微妙に静電気発生装置】だったか。
「…………せっかく呼び止めてあげたのに。」
不満そうな声を出す栞。
呼び止めてくれるのは有り難いが、明らかに今のタイミングはおかしい気がする。
明らかに開けてから声を掛けたよね、君。
「ふむ。まぁ君の痛がる顔を眺めるのも、それはそれでいいのだが、さすがに何だか可哀想だから教えてあげよう。」
やはりドSか、コイツ。
恐らく恨みがましい目をしているだろう僕に、栞は落ち着きはらって言った。
「そのドアは、【利き手と逆の手で開ければ電流は流れない】」
何だそれ。僕は恐る恐る左手でドアを開けてみた。
なるほど、電流は流れなかった。
「…………これってさ。どうやって利き手を判断してるのかな。」
「さぁ、知らないね。私はそんな事には興味ないから。………どうしても知りたいなら、鞘香君に直接聞くといい。」
ふむ。気が向いたら聞いてみるか。僕は結構興味があるし。
気を取り直して、取りあえずこのコーヒーメーカーを洗いに行く事にした。