2話 混沌の部屋ー01
部屋の中は――――ここは、やはりと言っておくべきだろう――――混沌としていた。
ドアの張り紙に書いてあった三つの職業に使うのであろう道具が、何の規則性もなく散乱していた。
せめてそれぞれのスペースにわけるとかさぁ…………色々方法があるだろうに。
口調からはお嬢様という印象を受けた千寿さんだが、この部屋の汚さは気にならないのだろうか。
「その辺に座るといいですわよ。」
と、とても座るスペースのなさそうな場所を指さしながら千寿さん。
気にならないらしい。…………やれやれ。
仕方なく隙間を見つけて座る。
栞は遠慮なく足でその辺のものを払って座ったようだ。
「ん?君一人かい、千寿君。」
座って一旦落ち着くと、栞が千寿に聞いた。
「ええ。そうですわ。…………そういえば珍しい事ですわね。どこに行ったのかは知りませんわ。」
「ああ、それは構わない。どうせ直ぐに帰って来るんだろう?待たせてもらうさ。」
「ええ、それは、私も別に構いませんわ。いつ帰って来るかの保障はしませんわよ。」
「…………そうか、ふむ。では、30分ほど待っても帰って来なかったら、他の2名の紹介は後回しにするよ。それで構わないよね、茉莉君。」
構わないも何も、こちらは始めからその件については栞に任せきっているのだ。
僕は、黙って頷いておいた。
「ふむ。ねぇ千寿君、ちょっと口が寂しいから、コーヒーでも入れてくれないかな?」
またそうやって刺激するような事を。実は栞ってドSなのか?いかにもプライドが高そうな千寿さんの事だ、これはまた人波来るなぁ、と僕は密かに溜息を吐きつつ身構えた。
「なっ!!なっ!!なんて無礼な!!自分で入れればいいでしょう!!」
無礼な、っていうのもどうなのかなぁ、と思ったけど、もちろんそんな事は口に出さず、僕は変わりに
「まぁまぁ、変わりに僕が淹れるよ。コーヒーメーカーとか有るのかな?」
と千寿さんに聞いた。