3章 自称占い師、自称発明家、そして自称探偵 1話ーとりあえず占い師の登場
「さあ、次はここにしようか。では、入りたまえ。」
栞が示した扉のドアには、【研究所兼探偵事務所兼占い所】と手書きで、書かれた紙が張られていた。うーむ、汚い字だな。
それにしてもいろいろ兼ねすぎだな、これは。
…………とりあえず、ノックでもしてみようかな。
コッコッと音が響く。
3秒ほどのタイムラグの後、
「開いてますわ。どうぞ、入ってらっしゃい。」
という女性の声が聞こえた。
「っ痛!!」
声の通りに、ドアを開こうと、取っ手に手をかけると、僕の手に電流が流れた。
「あら、すまないわね。その仕掛けの事をすっかり忘れてましたわ。」
と、惰性で開いたドアの隙間から見える女の人が言った。いかにも【占い師】という格好をしている。黒のローブに、顔の下半分はベールに覆われている。今時、こんな分かりやすい服装の占い師がいるものなのか?……………いるんだろうなぁ、現に目の前にもいるし。
それよりさっきの電気は何だったんだ?確か仕掛けとか言っていたが。
悩んでも仕方ないので、答えを知っていそうな目の前の占い師に聞いてみる事にした。
「始めまして、茉莉といいます。貴方は?」
「私は【占い師】の、千寿【せんじゅ】よ。以後お見知りおきを、ミスター茉莉。」
ミスター?えらく上品な喋り方の人だな。
「こらこら、【自称】が抜けているよ、千寿君。」
と、後ろから栞が突っ込む。さすがに慣れて来たけど、君って、微妙に口が悪いよね、栞。
「あら、自称ではありませんわ。私は立派な占い師ですわよ。」
売り言葉に買い言葉、のような感じで応じる千寿さん。
「そうかい。それにしては君の占いが当たった所を見た事がないんだけどね。」
「まぁ!!そこに直りなさい栞さん!!ちょっと説教が必要なようですわね!!」
次第にヒートしていく二人を慌てて止めに入る僕。こっちは聞きたいことがあるのだ
「ま、まぁまぁ。ちょっと栞も言いすぎだよ。」
「ふん。私は言いすぎた事なんて、今まで一度もないよ?いつだって本当の事しか言ってないからね。」
「ほらそれだよ。たとえそうだとしても、そんな言い方をしなくてもいいじゃないか。」
僕がそう言うと、栞はふん、と言って黙った。
あらためて千寿さんに向き合って、聞きたかった事を聞いてみる事にする。
「このドアの電流、さっき仕掛け、とか言ってましたが、コレは?」
「それはね、鞘香【さやか】君が作った【微妙に静電気発生装置】だよ。」
鞘香って…………ああ、例の、【微妙に落とし穴】を作った子か。ロクなもの作らないなぁ、その子。
「とりあえず、入る事をお勧めしますわ。」
と、部屋の中の人物が言った。