15話 思い出した事
思い出した。
もちろん全てを思い出せた訳ではない。が、【此処】に来てからの事を、どうあれ僕は思い出した。思い出す事が出来た。
頴娃君から渡された紙を見ても、最初は何の事か分からなかった。白地の紙に、
栞
茉莉
鞘香
フォリス
千寿
頴娃
亜空
千鶴子
英知
木霊?
と、ただ文字が羅列してあっただけだからだ。
意味が分からなかったが、何故自分がこんな紙を持っているのか?という事を考えた途端、頭が割れるような痛みが走った。これまで慢性的に感じていた痛みとは違い、本当に頭が壊れるかと思う程の痛みだった。
やがて痛みが治まると、いままで曇っていた思考が、一気に晴れた。
そして一番の収穫は、自分の【能力】と【代償】を思い出した事だ。
僕の【能力】は、【他人の能力を強化する】事。
そして僕の【代償】は、【自分の意思に関わらず、能力者を引き寄せる】事だ。
だから僕が【此処】に居るのは、ある意味必然なのかもしれなかった。
栞がたとえ実験の為に近付いて来たのだとしても、僕は彼女を憎むつもりは無かった。
栞に言わせると、僕のその感情は、どこか間違っているのだろう。
どうしても僕には、栞とあの白衣の男が、協力しているようには、思えなかったのだ。