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※12話 気になった事

「それで、気になる事っていうのは?」

フォリスの歩幅が小さいので、普段に比べて少しスローなペースで走りながら、俺は頴娃に聞いた。一刻も早く屋上に行きたい所だったが、塞ぎこんでしまっている今の不安定なフォリスを、独りにしておく訳にもいかない。それに、いつしか俺はその小さな体に、鞘香を重ねて見ていた。彼女には嫌われてしまったようだけど、そちらの方も放っておく訳にはいかない。


「ええ、さっき屋上に3つ気配があったんですよ」

3つ?それはおかしい事なのか?別に屋上に3人いたからといって、特別おかしな事だとは思わなかった。

「それが何かおかしいか?」

「いえ、それ自体はおかしくも何ともないんですが―――」

微妙に言いよどむ頴娃。屋上にいるうちの2人は、栞と茉莉だ、と何の疑問も無く俺はそう思った。もう1人いるとしたら、それは誰だろう。自分でも気付かぬうちに、自分の希望を込めて俺は呟いていた。

「…鞘香……か?」

「鞘香さん?いえ、鞘香さんではありません。今上にいるのは茉莉さんと栞さん。それと―――」

鞘香じゃないのか。顔には出さなかったものの、俺は少し落胆していた。

「―――いえ、やっぱり僕の勘違いでしょう。今の事は忘れて下さい」

「おいおい。それはちょっとねぇんじゃねぇか?言うなら最後まで言ってくれよ。もう1人が何だって?」

「…最後の1人なんですが、誰だか分からないんです」

「……………?まぁ、心が【見える】ったって万能な訳じゃないんだろ?ならそれくらい―――」

有り得るんじゃないか、と続けようとした。したのだが、頴娃の顔が予想外に真剣だったので、俺は口を閉じた。


「英知さん。貴方を信頼しているからこそ、これは言うんですけど。僕の【能力】は、今有り得ない程に強力になっています。それこそ、姿を見ていない人間の気配が探れるくらいに」

確かにそうだった。何となく聞き流していたが、「3人居た」という発言はそもそもおかしいのだ。図書館から見えたのは栞だけだったのだから。その栞が誰かと話していたようだったから、「2人以上居た」のは確かだろうが、「3人居た」という根拠は何もない。

【能力】が強まったのは、【アル・アジフ】のせいだろうな、と予想はついていたものの、それでも俺は聞かずにはいられなかった。

「何でそんなに【能力】が強まったんだ?」

「………貴方の考えている通りです。本を手放せば、【能力】も弱まると思ったのですが、どうやらそうじゃなかったみたいです」

そんなに便利な本なら、俺も触っておけばよかったな、と思い、すぐにその考えを打ち消した。今の一連の考えも【見られて】いるのだろうな、と少しだけ苦く思いながら、話を逸らすように言った。


「まぁ、実際に行けば分かるさ」

「そうですね。………それに、貴方の【能力】は、あんなものなくても十分すぎるほどに強力じゃないですか」


何もかもお見通しか。普通の人ならそれを恐れたりするのだろうが、俺は別に悪い気はしなかった。

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