10話 茉莉と栞ー02
廊下に出ると、栞がうんざりした顔で待っていた。
「まったく君は、女の子をどれだけ待たせたら気が済むんだい?」
「いやいや、そんなには待っていないでしょ。せいぜい5・6分くらいだよ。」
「…………………君は、…………………本当に…………………」
僕がそう言うと、栞は何だか本気で怒ってしまったようだった。というよりは、呆れたように見える。
ぶつぶつとその後も何かをつぶやいていたが、直ぐに気を取り直したように、顔を上げて聞いてきた。
「で?頴娃君と何を話していたんだい?」
出来れば言いたくなかった。恥ずかしいと言うのもあるが、能力は話さない方がいい気が、何となくしたからだ。
「……………言わないといけないかな?」
「…………………」
無言で睨んでくる栞。何だか分からないが、コレ以上怒らせても仕方ないので、さっきの事をかいつまんで―――頴娃の能力の事など、伏せるべきと判断した所は伏せた上で、――――話す事にした。
話が進むにつれ、栞の顔は暗くなっていった。そして話終えた僕に、諭すように言う。
「いいかい茉莉君。彼をあまり信用するな。」
「彼って、頴娃君かい?何でさ。あんなにいい子を。」
僕がそう言うと、栞はやれやれといった感じで首を振り、
「忠告はしたからね、後は君の勝手だよ。」
とつぶやくように言った。
自分が嫌っているからといって、そのあまりに酷い言い分に、僕は少し栞に憤りを感じた。