終章 世界の狂う重さ 1話 いつもと変わらない今日
目が覚めると、頭が少し痛かった。
ずきずきと、奥の方が痺れるように疼く。
僕は黙って体を起こすと、ベッドから降りた。
いつもと変わらない日常が、また今日も始まる。
変わらないこの毎日が、僕は大好きだった。
変わらないというのは、
狂っていないという事だ。
狂わない事は大事なことだ。
狂わないということは、
正常であり続けるという事だ。
だから僕は、この代わり映えのしない毎日を愛してもいた。
――――――――――。
頭痛が。でもこの程度なら我慢できる。
僕は顔を洗い、服を着替え、いつものように屋上へと向かった。
途中、図書館の前を通った。
でもそこは、台風が通り過ぎたようにぐちゃぐちゃだった。
―――片付ければいいのに。
何故そうなったのかは知らないが、部屋をそのままにしている理由が、いまいち分からなかった。
でも、この部屋は前からそうなのだ。別に片付けようとも思わない。所々白い突起物が見えるし、転んで怪我でもしたらたまらない。近付かない方がいい。
――――――――――コノヘヤハ。
屋上についた。
今日もまた、快晴だった。
【此処】に来てから、晴れ以外の空を見た事がない。
でもそれは大した事じゃなかった。
なんせ晴れなのだ。これがもし毎日雨なんて事になれば困ったものだが、晴れているうちは何の問題も無い。
――――――――――オカシイ。
頭が痛い。
でもこんなにも空が青いから、そんな事は些細な問題だった。
痛む頭を抑えながら、空を仰ぎ見る僕に対して、
いつもの場所で、
いつものように、
いつもの口調で。
いつものように栞が話しかけて来た。
「ねぇ茉莉君。一つ君に相談があるのだが。」