8話 千鶴子(再)登場
どことなくほっとした風な声で、それでも皮肉を言う栞。
「やあ千鶴子君、君はいつもいつも元気だねぇ」
「うふふ、そうよぉ。元気なのが私のステータスだからね!!」
無意味にビシッとポーズを決める千鶴子さん。
青っぽいスカートに、上は黒のジャージを着ている。その隙間から覗く白い服は、制服だろうか。
外見からだけでは、【代償】を伺う事が出来ない。
が、一つ気になる点があるとすれば、ポーズを決めたせいで強調された、肘まで覆う真っ白な手袋だろう。
整った顔―――かわいい、というよりは、美人という表現がしっくりくる―――が、少しヒクヒクしている。きっと、この雰囲気を何とかしようと、気をきかせてくれたのだろう。
意識して少し明るめの声を出し、千鶴子さんに挨拶する。
「貴方が千鶴子さんですね。どうぞよろしく。」
「こちらこそよろしく、茉莉君。…………………ふふ。君の体はなかなか良かったわよ。また今度、是非【貸して】ちょうだいね。」
「はは。まぁ、気が向いたら。」
「まぁ、気が向かなくても貸してもらう事は出来るんだけど、ソコは貴方の意思を尊重するわ。同意があった方が色々こちらとしてもいいしね。」
なにげに、この人の能力は、非常におそろしいな。
【体の自由を奪われる】事に比べたら、頴娃君の心を読むくらい、大したことないんじゃないか……………と、そんな風に思えた。
「駄目だよ茉莉君、ソコできっちり断っておかないから、増長するんだよ。」
栞も会話に加わってきた。
というか、それを君に言われる筋合いは無いと思うが。
「意外と速かったですね、千鶴子さん。例の本は見つかりましたか?」
と頴娃君が聞くと、少し残念そうな顔で、千鶴子さんが答えた。
「ごめんね。まだ見つかってないの。」
「いえ、いいんです。もともと、あるかどうかも分からないものですから。」
「そう?まぁ此処を探索するの結構面白いから、今度はあっちの方を探してみるよ。」
「そうですか?それは助かります。」
「いいっていいって。じゃ、そういう事で。また会いましょうお二人さん。」
そう言って、救世主は颯爽と去っていった。