13話 溜め込まれた感情ー01
「やっぱりあの本なのか!!あれが原因なのか!!」
男が隣りの女に聞いている。
襲い掛かっても、どうせまたはじかれるだけなので、僕はしばらく様子を見る事にした。
今弾かれたのが、女の【能力】なのか、男の【能力】なのか、それを見定めなくてはならない。
「………何を興奮しているんだ、亜空君。」
少し腹が立つ程に冷静な口調で、隣りの女は答える。
今僕に襲われかけたのに、信じられない精神力だ。
僕が途中で止めるとでも思ったのか?
邪魔が入らなければ僕は。
……………僕は。
僕は、殴った。殴った、筈だ。殴ったと、思う。
何故だ、何故その事に自信が持てないんだ?
「え!?あ、……ああ。………悪い。いや!!でも!!というか!!お前冷静すぎんだろ!!」
「そうかい?君が感情的すぎるんだよ。」
「ん!!んん。……………もう、そういう事でいいよ。」
「あの本が原因か、という質問だったね。それは言うまでもなくそうだよ。……都合3人目だからね、感情も溜まりに溜まってるんだろうね。」
「感情が、溜まる?どういう事だ?」
男まで冷静になりつつある。
後ろの女はしばらく動けないだろうが、2対1は少しまずいな。
負ける事はないだろうが、さっきの女のような【能力】を持っているかもしれない。
何より、自分の【能力】が分からないのだ。
挟み打たれるのは、避けたい所である。
「それで?君はまだ会話が出来る程度には、意識があるのかい?」
急に僕の方を向いて、話を振ってくる女。
変な女だ。
……………調子が、狂う。
破壊衝動が、少し収まった。
あの女―――栞、だったか―――と、もう少し話をしてみたいと思った。