※7話 千鶴子とフォリス
「もーなんなの、意味分からない。」
さっきから、何回目か分からない独り言をこぼす。
独り言というより、一人愚痴か。
いやいや、独り言でいいのか。
…………1人なんとか、ってなんだか卑猥な響きでいいわね。
じゃなくて、突っ込み役がいないから、ボケてもしょうがないし、面白くない。
1人思考か、うふふ。
…………はぁ。
気力を奮い立たせて、もう一度この部屋の観察を開始する。
四方を壁に囲まれている。
ドアはおろか、出入り口らしきものが存在しない。
本当に部屋なのだろうか、ここは。
私は、どこからこの部屋に入ってきたんだろう。
出口ないっておかしくない?隠し扉があるのかな、やっぱり。
それ以外に思いつかないし。
でもなぁ。もう30分ぐらい探してるのになぁ。
【能力】も使えないみたいだし、本当に何なんだろう、この部屋は。
部屋なのかしら、空間なのかしら。
響き的には空間の方がいいわよね、やっぱり。
秘密部屋より、秘密空間の方が。
それにしても、誰が作ったのか知らないけど、【此処】ってやっぱり変な所だ。
こんな面白い部屋があるのなら、もっと早くに教えてくれればいいのに。
こんな形じゃなく。
それにしても暑いわ。
空気がまったく循環していないんだから、当たり前なのかもしれないけれど。
………どうせ誰も見てないんだし、シャツ脱いじゃおうかな。
「………千鶴子?………何してるの?」
びっくりした。
タイミングが悪すぎる。いや、良すぎるのか。
シャツを腕にかけたまま、声をした方をみると、そこにいたのは、フォリスだった。
どこから入ってきたのかな。
それにしても、フォリスはやっぱりいつみても愛らしい。
二人して数秒固まった後、フォリスは、私の胸の辺りを見ながら喋り始めた。
「とりあえず服を着たらいいんじゃないかと私は思うわ、だいたいあなた―――」