7話 頴娃の能力
「ふん。やっぱりね。ねぇ茉莉君。能力を教えてもらうわけにはいかないのかなぁ?君の能力、非常に興味深いよ。」
「…………………」
僕がどう答えたものか迷っていると、すぐに栞が言葉を繋いだ。
「まぁ無理にとは言わないけどね。私の事を信用できてからでいいよ。」
すると、その声を受けて頴娃君が栞に聞いた。
「栞さん、彼はどんな人なんでしょうか。」
「うーん、どんなと言われてもねぇ。まだよく分からないなぁ。悪い人では無さそうだけど。」
「そうですか。でも、これは。あまりに。いや…………………気にしたら駄目ですね。僕の悪い癖です。」
「そうだよ。彼は悪い人じゃないよ。きっとね。」
僕に対する評価を、僕がいる前で平然と話している二人に、思わず口を挟む。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ。何で急にそんな話をしてるんだ?」
僕がそういうと、無邪気な笑顔で頴娃君が答えた。
「僕の能力はですね、【人の想いを読む】事ですよ。詳しい説明はさすがに控えさせて頂きますが、大まかに言うとそんな感じです。」
そんな。そんな能力は。
反則ではないのか?
僕は思わず握手していた手を離した。それを見た頴娃君は、笑顔を崩しはしなかったものの、少し傷ついたような表情を見せた。
「ああ、すみません。いつまでも手を。」
「あ、いや、違うんだ。その。」
あわてて言いつくろおうとする僕。しかし何を言えばいいのか分からないので、しどろもどろになってしまう。
「いえ、いいんですよ。慣れてますから。」
「いや、違うんだ。今のは反射的に………」
言えば言うほど気まずい雰囲気になりそうで、黙り込む僕。
頴娃君に聞こえないようにだろうか。小声で栞が僕に話しかけてくる。
「茉莉君。そういう事さ。最初にこの能力は少しキツいだろう?だから後に回そうと思ったのに。」
え、さっき君、頴娃君の事を、苦手って言ってなかった?
等といえる雰囲気ではもちろんなく。
「お心遣いありがとうございます、栞さん。」
笑顔で栞に対応する頴娃君。今の声が聞こえていたのか。
「うむ。いや。ああ。すまないね。」
そして、めずらしく狼狽して応じる栞。
「…………………」
「…………………」
「…………………」
「あらあら、あなたたち三人して、どうしたのよ?葬式みたいな顔しちゃって。」
微妙に気まずくなってしまった空気を打ち破ったのは、自称【図書館の支配者】だった。