※5話 亜空と栞
どこだ、ここは。
どこなんだ、ここは。
もう嫌だ。出してくれ。
手も足も動かせない。
どうやら狭い箱の中らしい。
なんでこんな事に?
嫌だ。嫌だ。俺が何をしたんだよ!!
出してくれよ。
嫌だ!!怖い!!もう!!俺は!!
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「―――――俺はっ!!!」
周りをゆっくりと見回す。
その白い部屋には、見覚えがあった。
「……………俺の、部屋だ。」
【此処】に来た時からずっと使っている俺の部屋だった。
「……………夢、か。」
今は何時なんだろう。
俺はどのくらい寝ていたのだろうか。
それにしても、嫌な夢を見たもんだ。
思い出したくもない。
俺が【能力】を使えるようになったきっかけ。
昨日あれだけ無理をしたからだろうか。
だから。
こんな夢を見てしまったのだろうか。
だから?
よく分からない。
重い体を何とか動かし、ベッドの上で体を起こす。
体中、べっとりと汗だらけで気持ち悪い。
「……………亜空君。」
シャワーでも浴びようと、行動を起こそうとした俺の背後から、その声は聞こえた。
昨日あんな事があったからだろうか、俺は、身構えながら振り返った。
「………栞か。どうした?昨日の件について、くわしい事情とやらを教えてくれるのか?だったらシャワーを浴びるから―――」
「違うんだ。」
俺の声を遮って、栞が言う。
「違う?」
「君が。君が、それこそ疲れ切っているのは分かっている。だがそれでも、君しかいないんだ。」
「俺しかいない?………話がよく分からんぞ。もうちょっと整理してくれ。お前らしくもない。」
「【アル・アジフ】に対抗できる【能力】を持っているのは、君しかいない。………私と一緒に、来てくれないか。」
「………………………。それって、今日じゃないと、駄目なのか?俺今日はちょっと―――」
「頼む。」
そういって、栞は頭を下げた。
………俺の見間違いか?
あの栞が?頭を下げる?
それでも。
それほどに懇願されても、俺は迷っていた。
もう俺の体は限界なのだ。
【能力】なんて使えたものじゃない。
今日はゆっくり休みたい。
でも。どうする?
あの栞が頭を下げるなんて、ただ事じゃないぞ。
こんなに真剣に頼まれて、それを断るなんて、そんな事俺に出来るのか?
だがやはり体が………。
俺は――――――




