3話 ラストディスカッションー06
「ふ。うふふ。」
実に嬉しそうに笑う千寿さん。
どこか真摯な目で見つめてくる。
手に光る【アル・アジフ】は、今までにないくらい光狂っているのに、千寿さんのその目には、確かに理性の光が強く残っていた。
「………何がおかしいんですかね?僕も、もちろん貴方もですが、その本のせいで、何かしら狂い始めている。」
「そうね。面白いわ。」
面白い?まぁいい。
「だから、僕もその原因を確かめたいんですよ。自分の手で。」
「ふぅん、ふふ、それで?」
「だから、さっきから言っているように、その本を僕に貸して下さい。」
「それは無理ね。当たり前だけど。」
「少し触るだけでいいんです。」
「それで何が変わるのかしら。………ほら。」
そう言いながらも、千寿さんは、僕の手にそれを、押し付けるように触らせようとした。
駄目だ。それじゃ駄目なんだ。せっかくここまできたのに。
「手触りとかっ!!ほら、いろいろ確かめたいですからっ!!」
「うふふふふふふふふふふふふふふふふふふ。それで?何を言っているの?」
「だから―――」
自分でも、理屈が通っているとは、とてもじゃないけど思えないが、なりふり構っていられない。
千寿さんの精神力の強さに賭けてみるしかない。
「―――だから、色々確認するために、この縄、そろそろ解いてもらえませんか?」
僕がそういうと、千寿さんは、何がそんなにおかしいのか、狂ったように笑い始めた。