29話 ラストディスカッションー03
「待って!!まだ話は終わってません!!」
必死で千寿さんを押しとどめようとする。
動かない両腕が、とんでもなくもどかしい。
声だけでどうにかなる訳もなく、じりじりと千寿さんは距離を詰めてくる。
「くどいわ。いい加減。もうあきらめなさい、貴方は失敗したのよ。」
冷たい目をして、千寿さんは僕に宣告する。
………って、あきらめられる訳ないじゃないか!!
命だぞ!?死んだら全部終わりなんだぞ!?
「でもおかしいじゃないですか!?さっきも今も、貴方はさんざん、僕にまだ未来があるような事をほのめかせていたじゃないですか!!」
「だから、そういう可能性もあった、という話よ。」
「………でも………じゃあ………だからって。」
自分の声が、萎んでいくのを感じる。
駄目だ。ここであきらめちゃ駄目なのに。
さっきまでの余裕が嘘のように、僕の心は沈んでいった。
「………死なないかもしれないわ。」
そんな僕を見かねたのか、
ぽつり、と、千寿さんが言う。
「?」
いまさら何をいうのか。
人の心をかき回して、何がそんなに面白いのだろう。
それでも、かすかな期待を込めて、千寿さんの言葉の続きを待つ。
「私が欲しいのは、貴方の血だから。………いや、正確には、2リットルの新鮮な血液よ。それだけあれば、十分儀式は可能だから。」
「………。」
だから、なんだというのだ。
2リットルなんて、十分致死量じゃないか。
貴方がそれを知らない訳がないでしょう?
「だから、ね?死なないかもしれないでしょう?」
そう言う千寿さんの笑みは、相変わらず晴れ晴れとしていた。