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26話 千寿の能力ー02

「………面白いわ。続けて。」

笑顔の仮面ではない、嬉しそうな含み笑いで、千寿さんは言った。


………続けて?

僕今質問した筈なんだけどなぁ。質問に質問で返されるパターンなら結構聞くけど、

質問に更なる説明を促す、っていうパターンは、なんというか斬新だな。

何を続ければいいのかよくわからないじゃないか。

いや、まあ、続けろというなら続けるけど。


「………つまり、さっきの部屋で、鍵を掛けた覚えのないドアが開かなかったのは、貴方が【能力】を使って、【ドアが閉まっている】という状態を選んだんじゃないですか?」

自分でも何を言っているのか、それが本当に正しい事なのか、よく分からないままに、僕は言葉を続けた。

「同じように、亜空の【広げた】空間を、一瞬で移動できたのも、【広がったという事実】を無かった事にしたんじゃないですか?」


僕の言葉が進むにつれ、千寿さんの笑みも広がっていく。

【アル・アジフ】の光も、それに連れて、大きくなっていく。


―――話を止めるべきか?いや、でも、こんな中途半端な状態で止める訳には………

「【未来を選ぶ】というのはつまり、そういう事、なんじゃないですか?」



「じゃあ聞くけど、そんな事ができると思う?【ドアが閉まった状態を選ぶ】なんて大それた事。知ってると思うけど、いわゆる【常識】から外れた事は、例え【能力】を使っても難しいのよ?」

腕を組み替えて千寿さんが聞く。


「………普段なら、無理なんでしょう?」



「………聞くわ。」


続きを、という事だろう。

どうやら、僕は試されているみたいだ。

「今、貴方は普通の状態じゃない。【アル・アジフ】によって、【能力】が強化されている。」


「それで?」

【アル・アジフ】の光は、ますます強くなっていく。


「それで、だから、今の貴方なら、少々有り得ない事でも、可能なんでしょう?」


この仮説がもし間違っているなら、僕はこのまま生贄にされてしまうのかもしれない。

でも不思議と、間違えている気はしなかった。



正解だったからどうなのか、という気も、しないでもなかったが。

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