20話 ききたいのならいたみをともなうべきよ
「でも、どっちみち、いずれは解く事になりますよね?」
「あら?どうしてそう思うの?」
「だって―――」
そうか、別に解く必要なんて微塵もないんだ。
このまま僕が何の手も思いつかなければ、【アル・アジフ】によって増幅された激情で、千寿さんが僕を殺してしまう可能性もある訳だし、
例え殺す事を千寿さんが拒んでも、このまま放って置かれれば、いずれは飢えて死ぬ事になる。
あれだけ大声を出しても今まで外部から何の反応もないのだ。そう簡単に助けが来るとは思えない。
甘い考えは、もう捨てよう。
「―――いえ、やはり質問を変えます。貴方は、何の為に僕を縛ったんですか?」
「賢明な判断ね。私のこの仮面が何時まで持つか分からない以上、あまり無駄話をしている時間的余裕は無いから。………貴方を縛った理由はね、私の【能力】をさらに高めるためよ。」
「それは自分の意思で、ですか?」
「難しい質問ね。私の意志といえば、私の意志だけど、違うといえば、違うわ。」
「………分かりました。じゃあ、具体的には、僕はこの後どうなる予定なんですか?」
「いいの?聞いて?」
サディスティックな笑みを浮かべる千寿さん。【アル・アジフ】が僅かに光を取り戻す。やっぱりこの人、もともとSっ気があるんじゃないのか?
現時点で自由に動かす事の出来ない自分の体の行く先を聞くなど、怖いに決まっている。
でも、
「時間が、ありませんから。」
そう言った時の僕の声は、果たして震えていたのだろうか。
それは僕には分からなかった。
千寿さんが、元の笑顔に戻って言う。
「このままいけば、貴方には、タロットカードを作る為の、生贄になってもらうわ。」
余りいい予想は立てていなかったが、生贄という言葉を聞いて、どうやら予想よりも悪いらしい事が想像できた。
「……………生贄。」
今度こそ声が震えていたと思う。
「そう、生贄。…………………………どうしようかしら、時間がどれだけあるのか分からないけど、少し話をしましょうか?」
「それを聞く事に、何かメリットがあるんですか?」
自分がこれからどうなるか、なんて事。
それも悪い未来が確定の。それを変える為に頑張っているんじゃないのか?
「あるかも、しれないわ。」
「かも?」
「私の【能力】について、話してあげられるかもしれない。ただ単に情報を伝えるのは、今の私には余り出来ないけど、別の目的と同時になら――この場合、貴方を精神的に追い詰めるのと同時になら―――可能、かもしれない。」
「……………。……………。……………聞きます。」
何にしろ、情報は得るべきだ。