15話 何を信じるかー01
「どういう事………ですか?成功って、何が。」
僕がそう聞くと、千寿さんは、右手の人差し指を自分の唇にあてるジェスチャーをして、答えた。
「それは今は秘密。……というより、言えないわ。」
「………。」
僕は完全に、この後どう会話を運ぶべきかを、完全に見失ってしまっていた。
今の千寿さんは、見ようによっては、正気のようにも見えるのだ。
それなのに僕はこうして縛られ、その事について、なんの説明も与えられてない。
この状況はどう捉えればいいのだろう。
そろそろ束縛の説明を求めるべきか?
僕が迷っていると、千寿さんが、変わらぬ笑顔で話しかけて来た。
「ふふ、少し、話さない?」
今までも会話はしていたが、これはそういう意味の言葉ではないのだろう。
「………ええ。………そう、ですね。」
こうして、片や拘束された男、片や機械的な笑顔を崩さない女の、
奇妙な会話が再開した。
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「前から言いたかったんだけどね、君って結構、騙されやすいよね。」
「そうですか?」
「そうよ、それが悪い事とは私は思わないけど、度が過ぎると足元を掬われるわよ?」
「足元を掬われるって、また穏やかじゃないですね。」
「あは、私は忠告してあげているのよ。そんなに遠くない未来に、貴方が騙されて痛い目に逢うのが【見えた】から。」
「見えた?」
「そう、私の【能力】で。」
「【能力】!?」
「………………。」
「………………。」
「………………………………………………。」
「……………………なんでそこで黙るんですか!?」
突っ込みながら、僕は少しだけ安心していた。いつもの千寿さんに、やっと会えたような気がしたから。
ただ、それでも笑っている顔が、少々不気味ではあったけれど。
「……………嘘よ。」
「は?」
「ウソ。」
「あの………何がですか?」
「さあ?」
「さあ、って………。」
「…………少し、考えてみて。無理しない程度に。何が本当で、何が嘘なのか。私には、貴方が考える事を半ば放棄しているように見えるわ。」
そう言う時に、少しだけ心配そうな表情になった千寿さんが、印象的だった。