10話 とらわれ
眠りの世界から、ずるりと滑り込むように僕は目覚めた。
どこを境にして、いつから目が覚めたのかよく分からない。
そんな、曖昧模糊とした目覚めだった。
体全体がどことなくだるく、動くのも面倒だった。このままもう一眠りしたい。
「……………。」
頭がふわふわとしている。
何か考えるべきなのだろうが、僕の頭は、しばらくの間思考する事を放棄していた。
不思議だった。自分がいつの間に寝たのか覚えていなかった。
「…………………………!?」
否。
違う。
そうじゃない。
僕は眠っていたのではなく、気絶していたのだ。
それは、意識を失っていたというその結果には、そんなに大きな違いをもたらさないかもしれない。
でも、途中の過程が、全く違う。
―――――つまり、そうか。
だんだんと頭が働き出し始める。
思考という名の歯車が、少しずつ廻り始めるのを感じたような気がした。
あのまま僕は気絶してしまったのか?
またしても、だ。
大事な場面で、僕は何も出来ない。
違う。今はまだ悔やむ時じゃない。
現状を確認しなければ。
あの後二人はどうなって、誰が僕を寝かせてくれたのか。それを確かめるのが先決だ。
「……………っ!?……………はぁ?何だこれ?」
しかし僕は、起き上がろうとして、それに見事に失敗した。
僕の手足が、僕の意思とは関係ない方向へと引っぱられた。
今まで頭がぼんやりしていて気付かなかったが―――これに気付かなかったなんて、どうかしていると自分でも思う―――僕の四肢は、ベッドの四隅へと、それぞれ乱暴に括り付けられていた。
「……………やれやれ。」
内心気が気ではなかったが、
少しでも自分を落ち着かせるためと、
僕を見ている誰か―――その誰かが今の僕を見ているとは限らないけど―――に舐められないように、
僕はぽつりと呟いた。
「……………あんまりいい状況じゃ、ないみたいだなぁ。」