8話 深まる溝
頭の痛みが治まらない。
むしろどんどん加速していくようだ。
このままこの痛みは、治まらないのではないかという、言い知れぬ不安感が、ひたすらに僕を襲う。
「あは、何をそんなにムキになってるの?うふふふふ。」
どこか焦点の定まらない目で、嘲るように笑う千寿さん。
「貴方がいつまでもふざけてるからでしょ!!」
今にも掴みかかりそうな勢いで、怒鳴る千鶴子さん。
どうやら本気で怒っているようだ。
なんとか宥めたいが、痛み続ける頭に惑わされ、僕はそれどころでは無かった。
「うふふ、ふざけてなんてないわ。私は真剣よ。あは。」
「真剣だって言うんなら、その気持ち悪い笑いを止めなさいよ!!!」
「あは。それは無理よ。うふふ。これでも抑えている方なんだもの。うふふふふ。」
「千寿っ!!貴方っ!!本当にいいかげんにしてよっ!!」
「…………………うふ。貴方もしかして、その本を探してあげたっていう子の事好きなの?」
「っ!!何でそうなるのよっ!!貴方のそのふざけた態度がムカつくだけよ!!」
「…………………うふふ。本当にそうかしら?始めて見たわ、貴方がそんなに怒る所、うふふふふふふ。」
「だから何がおかしいのよっ!!!」
「…………………うふふ。別に何もおかしくないわ。…………………うふふふふ。」
眩む僕の視界に、血管が浮き出るほど握り閉められたこぶしが見えた。
止めなければいけない、と思った。