表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/200

4話 図書館の支配者ー04

およそ見た目からは想像もできない、ギギギという音を立てながら、―――こんな表現を使うなんて、自分でもどうかと思うが―――嫌そうにドアは開いていった。



ぇぇぇ、ここ本当に図書館か?


入って5秒と立っていないが、僕はこの一応【図書館】という呼称があるらしい部屋から出て行きたくなってきた。


回れ右をして出て行こうとしたが、後ろは栞がしっかりと塞いでいる。塞いでいるばかりか、

「ふふふ、どうしたんだい茉莉君。速く前に進みたまえよ。」


とか言いながら、ぐいぐいと後ろから押してくる。

もしかして楽しんでないか?コイツ。

やれやれ仕方ない。覚悟を決めて進むか。


「うおぅっ!!」

一歩目を踏み出したその床が、ぐにゃんと沈みこんだ。

見た感じ、なんてことない普通の床にしか見えないのに、こんにゃくを素足で踏み潰したような奇妙な感触とともに、僕の足は5cmばかり沈んだ。さらに力を込めれば、それに比例してその分沈みそうな感じだ。


「あはは。ほらほら速く進みなよ。」


「えーと、栞?何か床が沈むんだけど。」


「っくくく。うん。だから?」

栞は腹を抱えてくすくすと笑っている。さっきまであんなに塞いでいた人間とは思えない。


「だから………とりあえず………そうだな。何で床沈むのかを聞いてもいい?」


「まあ、そのくらいは教えてあげようか。それは、【微妙に落とし穴】だよ。」

目じりの涙を拭いながら栞が言う。

というか、そんなには面白くないでしょ、今の。栞の笑いのツボがよくわからない。


「微妙に?」


「そう、微妙に。そのまま進んでいくと、ずぶりずぶりと沈んでいき、その深さは最終的に、落とし穴にかかった人間の、腰骨の上30cmにまで達する。」


「ん、んん?」

何だその反応に困る落とし穴は。


「だから、左右どちらかに避けて進むといい。その落とし穴が有効な範囲は見た目より相当狭いから。」


「…………………もしかして、その何とか落とし穴を作るのが、その頴娃とかいう人の能力?」


それを聞いた栞が、あきれた顔で言う。

「そんな訳ないだろう。

そんなちゃっちぃ能力の人間は【此処】にはいないよ。それに、それだと【図書館の支配者】という名前に、欠片も関係ないじゃないか。

その【微妙に落とし穴】は、鞘香【さやか】君が、趣味で作ったものだよ。…………そうだな、君が混乱するといけないから、鞘香君の紹介は、実際に会った時にするとしようか。」


また新しい名前が出てきたか。何か少し疲れてきたなぁ。

「うん………まあ………いいんだけどね。」


「だからほら、左右に避けて速く進みたまえ茉莉君。」


栞にそう急かされたものの、とても直ぐに進むつもりにもなれず、僕はあらためて辺りを見回した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ