6話 ちらつく光
「ん?本?本って?…………あー、確かに何か持ってるわね。」
僕に言われるまで気付いてなかったようで、千鶴子さんは、よく気付いたわねーと、なにやらしきりに感心していた。
「ていうか、気付いてなかったの?あんなに目立ってたのに。時々光ったりしてたし。」
「………いや、そこでその嘘はどうなのよ。もしかして千寿に対抗しちゃったりしてるの?」
名前が出たので、反射的に千寿さんの方をちらりと見ると、どことなく黒い笑みを浮かべていた。
ときどきくすくすと笑いながら、僕たちの会話を聞いている。
…………………何だか本当に怖くなってきた。
「え?嘘って?何が?」
「んー、何かさっきから微妙に会話が噛み合ってない気がするわ。」
それは主に貴方のせいだと思いますけどね。変なガヤや、変な突っ込みをやたらめったら入れたがるし。
「会話の噛み合わせはおいといて、嘘なんて言ってないけど?」
「噛み合う、って言葉は微妙にエロいんじゃないかな、と思うのよ。」
「そうだね。で、嘘っていうのは?」
「そんなにさらっと流されると、さすがに何だか悲しいわ。お姉さん、困っちゃう。」
「……………。」
無言で見つめる。少し呆れ顔になっているんじゃないかと思う。
「…………む。ごめん。なんか真剣な空気って苦手なのよね。言っちゃいけないとは思うんだけど、ついつい口が………」
「………何となく気持ちは分かるけど、そろそろ話を戻さない?」
「…………………。本は、一回も光ったりして無いわ。光ったりしたら、さすがに私だって気付くもの。」
光ってない?そんな。僕の見間違いだとでもいうのか?
否、あんなに何度も光っていたのだから、見間違いという事もないだろう。
それは同様に、千鶴子さんの見落としという可能性も否定する事になるけれど。
………考えられる可能性としては、僕だけに見えている、或いは千鶴子さんが嘘をついている。こんな所か。
…………………。
千鶴子さんが嘘を付く意味は無い、と思うから、あの光は、僕にだけ見えていたのかもしれない。
こんな事をいつまでも考察していても仕方ないので、気になった事を聞いた。
「それより千鶴子さん、何だか、あの本に見覚えがあるみたいな事を言ってなかった?」
僕がそう聞くと、千鶴子さんは「あ、そうよ」と呟き、なんら躊躇する事なく、千寿さんへと問いを発した。
「ねぇ千寿。なんで貴方がソレを持ってるの?それは私が頴娃君に探してあげたものよ?」




