4話 事象確定ー03
「うふふ、貴方のその困惑した顔、凄くいいわよ。」
いいかどうかは別として、それは困惑もするだろう。
全部ウソって、どこからどこまで?
さっき言った【能力】の事か?それとももしかして、この変な雰囲気が全部演技って事か?
………………いや、それはさすがにないだろう。
ここは額面通り、さっき言った【能力】が全部ウソという事でいいと思う。
僕が返事に窮していると、千鶴子さんが発言した。
「貴方いったいどうしたのよ千寿。さっきから挙動がおかしいわよ?…………………困った顔がいいのは同意するけど。」
……真面目っぽい質問の後に、余計な意見を付け足さないで欲しい。
「うふ。ふ。そう?そんなにおかしい?私。」
「うん、何かこう……気持ち悪い。」
あっさりとそう言い放つ千鶴子さん。
普通そういうのって言いづらいと思うんだけど、意外とスッパリ言うんだね。
「あは。そう。おかしいの。そうね。私もそう思うわ。あはあ。でもね、分かってても止められないの。何だか体がね、うずうずするのよっ!!」
……………千寿さんが、自分の世界に入りつつある。
まずいな、いろんな意味で。
「ねぇ茉莉君、千寿って、時々あんな風になったりしたっけ?」
少し小さめの声で、千鶴子さんが聞いてきた。
「いや、しないと思うよ。少なくとも僕の知ってる範囲では。」
「そうよね、私の知ってる範囲でもしないわ。じゃあ、何であんな風になってると思う?」
「僕が知ってる訳がないだろ、だいたいそれをいうなら、千鶴子さんの方が付き合い長いんだから…………いや、待てよ。」
ずっと、頭の片隅に引っ掛かってる事がある。
「断言は出来ないし、何でそう思ったのか、自分でも分からないんだけど―――」
「周りくどいわね。で?」
「千寿さんが持ってる本、アレが怪しいと思う。」




