18話 此処ノ人ー02
しばらく話していると、ふいに栞が黙り込んだ。
唐突だったので、少し驚いたが、栞の考えが見えないのはいつもの事だ。
気付かれない程度に顔を傾けて栞を観察してみると、何か考え事をしているようで、難しい顔をしている。
…………………急いでるんじゃなかったのか?
まぁ、僕はむしろ今の状態を歓迎なんだけれど。正直もう歩き疲れた。これは明日は筋肉痛を通りこしたよく分からない状態になりそうだ。
いらない事を言ってまた怒らせても仕方ない。
僕は栞をそっとしておいて、椅子に腰を落ち着かせた。
やれやれ、やっと一息つけた。
それにしても栞のあの杖は凄いな。
とうよりも、亜空の【能力】が凄いと言った方が正しいか。
あの杖が無かったら、今頃まだ歩き続けているんだろうか。
考えるだけでうんざりする。
そもそも何であんな状態になったんだろう。
栞はあれが亜空の【能力】だと言い切ったが、僕には亜空がそんな事をする意味が、どうしても分からない。
…………………さっき散々にけなされたけど、あの杖が無かったとしたら、栞だってあの空間から出られないんじゃないのか?
その事を栞に聞いてもどうせ、それを予測するのが〜とかどうたらこうたら言われそうだけど。
ん、予測か。
ああなる事が栞には分かっていたとか?
…………………いや、それはさすがに考えすぎか、いやでも……………。
「茉莉君。」
考えに没頭している僕に、栞が話しかけて来た。
そして、真剣な表情で続ける。
「悪いんだが、私は急用を思い出した。この杖を貸してあげるから、急いで【研究所兼探偵事務所兼占い所】へ行ってくれ。」
そう言った後、僕に質問の予知を与えず、栞は部屋を駆け出して行った。
…………………なんなんだ、いったい。