17話 此処ノ人ー01
どこか手馴れた感じで、フォリスをベッドに寝かせる千鶴子さんを、栞と並んで見ていた。
なんであんなに手際がいいんだろう。
看護士さんみたいに見える。と思ったがやっぱり見えない。千鶴子さんだからな。手つきも何かちょっとエロいし。
指先を、あんなに忙しなく動かす必要がないだろうに。
なんだか少し手持ち無沙汰になったので、栞に問いかけてみた。
「さっきの杖って、一ヶ月くらい前に頼んでたやつ?」
と僕が聞くと、栞は少し驚いたように言った。
「ん、覚えていたのかい?驚いたな。」
「なんとなく、ね。それでそれって、どういう仕組みなの?」
「仕組み、とは?」
「どういうカラクリで動いてるの?【能力】って、物に込められたりするんだっけ?」
「仕組みは私も知らないし分からない。鞘香君の様な【能力者】もいる訳だし、一概に不可能と言い切る事は出来ない。ただ断っておくと、普通は出来ない筈だ。」
「普通は?」
「いくら私たちの持つこの【能力】が、物理法則を無視する程のものだとしても、世間で言われている、常識から外れるというのは、本当はとても難しい事なんだ。そうだからこそ政府も、病院に隔離するなんて馬鹿な真似をしているんだからね。」
「………………………でもその杖は確かにそこにあるよね。」
「………ふむ。前にも言ったと思うけど、【此処】にいる人間は、何故か全員、尋常じゃない程の【能力】を持っている。君もそうなんだろう?」
いや、僕は。
覚えてないんだけど。そうなのだろうか?
「………という事は栞も?」
「ノーコメントだ。」
「……………。」
ノーコメントっていうの止めない?
何かずるいよ。まぁ僕が言えた事でもないから、黙ってるけど。