16話 空間破杖ー03
「それでだね、茉莉君、今すぐ付いて来て欲しい所があるんだが。」
そこでチラリと千鶴子さんの方を見て、続いて僕の背中にいるフォリスへと視線を動かす。
そして、僕に向かって言った。
「ふむ。仕方ない。一度どこかの部屋へ行こうか。こちらの用は、なるべく急ぐんだけどね。」
「いや、でも、先に千鶴子さんの用を済まさないといけないし………」
「なんだ、そうなのか。………なるべく早く済ませてくれると有り難い。」
「あ、それなら大丈夫だよ。私の方は別にいつでもいいから。急いでるんなら、先にそっちの用事を済ませるといいよ。あ、でもフォリスちゃんを休ませる為にも、どっちみち一度【映写室】へは行った方がいいかも。」
「ふん、そうか。済まないね。それなら手早く部屋まで行こう。この埋め合わせはまた何か考えておくよ、千鶴子君。」
栞が埋め合わせをすると言った瞬間、千鶴子さんの目がキラキラと輝き出し、
嬉しそうに
「あ、じゃあ今度また体を貸し―――」
と言った。
「それは遠慮しておく。」
が、すぐにそう遮るように栞は言い、【映写室】のあるであろう方向へ向かって、杖を振った。ぼんやりとした明かりが、その瞬間だけ少し強く光ったように見えた。
すると、歪んでいた空間が正されたように、目の前に【映写室】が現れた。
……………………………………。
………こんな近くまで来てたのか。
………なんにしろ、これで一度休めるな。