3話 図書館の支配者ー03
「ふぅ。」
「落ち着いたかい?茉莉君?」
一時はどうなる事かと思ったが、千鶴子さんが出て行くと、背中のムズムズはすぐに引いていった。
「あぁ。何とかね。」
「それで?どうする?千鶴子君には会っていくかい?今は図書館にいるらしい。」
「いや、そうだな、うーん、出来れば、遠慮しておきたいね。」
「ふふっ、言うと思ったよ。でもまぁ、最初の挨拶は重要だからね。入ろうか、図書館に」
「…………まぁそうだろうね。何となく、そんな気はしていたよ。」
「というかね、本当は、図書館の紹介はもっと後に回そうと思ってたんだよ。私は。」
「ええ!?でも最初に図書館に来たじゃん。」
「じゃん、って君。………だからね、図書館の場所の紹介だけして、さっさと次にいこうとしていたんだよ。それなのに、君がぐずぐずしてるから。」
「ぐずぐずって………」
「本当に勘弁して欲しいよ、お陰で千鶴子君だけじゃなく、頴娃くんも紹介する必要が出来てしまったじゃないか。最後に回そうと思ってたのに。」
「えー君?アルファベットの?あだ名か何か?」
「いや、違うよ。【えい】だよ。え【い】。というか、ベッタベタなボケをするねぇ、茉莉君。」
「いや、別にボケたつもりは無いんだけどね。頴娃ってのはどんな子なの。」
何処か沈んだ声で栞が答えた。
「…………………【図書館の支配者】だよ」
どこかで聞いたような名前だな。というかそれは………
「それは、千鶴子さんのあだ名じゃなかったっけ?」
「いや、それは違うよ。」
「いやでもさっき君が…………………」
栞はちょっとだけ考え込んだが、直ぐに思い出したようにいった。
「ああ、アレはだから、千鶴子が勝手に私に言わせたんだよ。」
そういう事か。
「ふーん、で、頴娃っていうのはどんな人なの?」
栞はやはり少し沈んだ声で言った。
「…………………だから、【図書館の支配者】だよ。」
何でさっきから声が沈んでるんだろうか。
「何かさっきから微妙に元気がない気がするけど。」
「うん。ちょっと私は頴娃君が苦手だから。」
それは余り理由としては成り立っていない気がするんだが。
「ふぅん。それはまたどうして?」
「あっさり聞くんだね、君は。そういう事を。………彼はね、ちょっと性格が特殊なんだよ。うーん、まあ、能力者っていうのは、どこかしら変な人が多いもの何だけどね。私と彼は、何というか…………………そう、相性が悪いんだよ。相性が。」
「相性、ねぇ。」
彼女が特殊な性格というなんて。どんな奴なんだろう、興味でてきたな。
「はぁ、あんまり気が進まないけど、そろそろ入ろうか、図書館に。千鶴子君をあまり待たせてもいけないだろうしね。」
そこで名前を出さないあたり、本当に頴娃という人が、苦手なのかもしれない。