12話 毒舌ー01
「いつもって、そんな僕をトラブルメーカーか何かみたいに言わないでくれないかな、栞。」
「そうだよ、茉莉君は、トラブルメーカーじゃないよ、ただのエロい人だよ。」
千鶴子さんが横からフォローの様なものを入れる。
「ふん、トラブルメーカーかどうかは別として、君がそんなに無能だとは思わなかったよ。…………千鶴子君も、二人して何をしているんだ?」
「何って、ここから出る方法が分からないから、とりあえず歩いてたんだ。」
「とりあえず歩く?馬鹿馬鹿しい。君は本当にそんな事でこの状況を乗り切れるとでも?」
「いや、思ってないけどさ、とりあえず何かはしないと落ち着かないから。」
僕のその返答を、栞はハン、と鼻で笑うと、千鶴子さんに向けて言った。
「千鶴子君も千鶴子君だよ。君は何がしたいんだい?茉莉君に教えてあげればいいじゃないか、これが亜空君の【能力】である事を。」
「いやー、何かさー、教えない方が面白そうだったから。それに、その事を教えても、どうせこの空間から出られないだろうし。」
「やれやれ。まぁいいんだが。茉莉君、君も実は気付いてたんだろう?それで、この場所から出る手段の一つも思いついたのかい?」
いや、思いついてないから、歩いてたんだけど。
「その様子だと、何も思いついていないようだね。病みあがりだからといって、頭の回転の鈍さの言い訳にはならないんだよ?」
心底呆れた様子で、栞はそう言った。