11話 拡散廊下ー05
「―――それで、その時の友達が、やたらと歴史に詳しかったのよ。って聞いてる。」
「ええ、聞いてます。」
聞いてますよ、一応は。
特に当ても無く、僕たちは廊下を歩き続けていた。
「確かに、今話してる話が、君にとって、とてつもなくどうでもいい話なのは私だって分かってるけど、君のその「ちょっとエロい話以外は基本スルーでいきますよー」的な空気は駄目だと思うな。」
そんな空気は醸し出していません。
「………いや、まぁ。うん。…………………いつも千鶴子さんから振ってきますよね。」
「そんな事は無いわよ。仮にそう見えるのだとしても、それは君の「微エロ話して欲しいオーラ」をお姉さんが敏感に感じ取ってだね…」
どんなオーラだよ。
「………それはオーラというよりは雰囲気ですよね。まぁどちらにしろ僕はそんなもの出して無いけど。………それであの、さっきから気になってたんですけど、「お姉さん」って何ですか?」
「はぁ?茉莉君は「お姉さん」の言葉の意味が分からない?これは深刻な悩みだねぇ。」
「いやいや。だって見た感じ、同い年くらいでしょ?僕と千鶴子さんって。」
「まぁねぇ。でもそう思うんならなんで敬語なの?」
「一応年上の可能性もあるので。」
「どうだろうね、まぁ、そこで年を聞かないのが、君のポリシーなの?」
「ポリシーとまではいきませんけど、まぁ一応は。」
「はぁん。まぁ、年は教えないけど、もうめんどくさいからタメ口でもいいよ?お姉さんは寛大だから。」
その時点に至っても、お姉さんと呼んでいる時点で、何だかすでに少しおかしい気もするが。
まぁ、そういう気分になったら、タメ口に変えよう。
それにしても、この廊下から、本当に抜け出せるのだろうか。
もういい加減飽き飽きして来た頃ふいに、後ろから声が響いた。
「………まったく、君はいつも何かしら問題を抱えているね、茉莉君。闇雲に歩いても無駄と、もっと早めに悟るべきだと、私は思うよ。」