8話 拡散廊下ー03
「…………………。」
あー、疲れた。もう歩くのしんどい。
足を止めて、フォリスを壁にもたせ掛ける。
僕は、一度休憩を取ることにした。
…………………考えてみれば、ただやみくもに歩いても仕方ないな。
とにかく早く休憩したい一心で、歩き続けていたけれど、前に進んでいる気がしない。
あー、余計な体力を使ってしまった。だいたい、【能力】なのかもしれないのに、ゴリ押ししようとしたのが間違いだった。
ちょっと休憩がてら、真面目にこの現象について考える事にしよう。
歩いていた感覚からすると、前に進んではいるようだ。
つまり、同じ場所をループしている、という事ではないように思う。
というのも、古典的な手だが、その可能性も考慮して、床に目印を置いておいたからだ。
…………………となると、亜空の【能力】かな?やっぱり。
でもそうするとお手上げなんだよな。
んん、できる事からしていこうか。
とりあえず、これがフォリスの【代償】である可能性をつぶそう。
僕は、フォリスを起こそうと、手を伸ばした。
肩を揺すってみる。首がガクガクなってるが、起きる様子はない。
軽く顔を叩いてみた。ぺちぺち、と小気味いい音が鳴るが、やはり起きる様子はない。
…………………駄目か。これ以上はさすがに気が引けるので、僕は、もう一度思考に戻ることにした。
その間に目を覚ますかもしれないし。
「あら、止めちゃうの?」
「………………!?」
びっくりした。急に後ろから誰かが声を掛けてきた。
「や!茉莉君。」
元気に挨拶して、千鶴子さんはビシリとポーズを決めた。
「あ、ああ、千鶴子さん。どうしてここに?」