22話 フタリメ
「なるほどな。そう考えた方が、いろいろしっくり来るな。」
英知も、僕の考えに同意してくれた。
つまり、千鶴子さんから謎の会話について聞いた時点で、【此処】における電話を【認識】した僕たちは、
その時点で始めて、電話が見えるようになったという考えだ。
【認識】するまで見えない電話なんて、正直意味が分からないけど、
今更そんな事を言い出してもしょうがない。
有るものは、有るのだから。
それに、そんな事を言い出したら、あの自力で動く骨の方がおかしい。
…………………いや、違う。
違うんだ!!アレは、あの骨は、自力で動いていた訳じゃなく―――
…………。
―――ああ、頭が、酷く、痛む。
ぼんやりと霞む頭に、英知の声が響く。
「―――という事は、やっぱり全ての突破口は、あの電話だな。さっきまで鞘香の事でごたごたしてたし、俺の精神的にも余裕がなかったんだけど、こうなったら調べてみるか。なぁ茉莉、お前も来るか?…………ん?茉莉?どうした!?」
「電話を調べる、って?鞘香さんの事は放っておくのかよ!!」
心配してくれる英知に対して、僕は、自分でも、何故そんな事を言ったのか、よく分からない事を言った。
無理矢理に理由をこじつけるなら、
刺すような痛みで、混乱した頭は、
英知のその電話を調べるという行為に対して、鞘香さんに対する英知の接し方に、ある種の軽薄さを覚えていたのかもしれない。
「………何を怒ってるんだ?おまえ。」
「怒ってないよ!聞いてるんだ!鞘香さんの事は放っておくのか!?」
「………………何を言って……………お前、もう今日は休んだ方がいいんじゃないのか?」
「質問に答えろよ!!」
自分でも、何をこんなに怒っているのか分からない。
とにかく、とにかく。頭が痛かった。
「…………チッ!別に放って置くわけじゃないだろ!?俺は自分が出来る事からっ!!しようとしてるだけだ!!」
「何で今そんな事するんだよ!!鞘香さんが心配じゃないのか!?」
「心配に決まってるだろうがっ!!…………くそっ!!…………………………………電話は俺一人で調べとくから、お前は今日はもう寝とけ!!」
しかし、怒声とともに部屋を出ていった英知と、僕が次の日会う事は無かった。
次の日も、その次の日も。