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大好きな少年漫画の世界に転生したのに原作が始まりません

作者: 鉄箱

 かつて一世を風靡した少年漫画、“マジックガンナー猛”。

 お父さん世代が幼児の頃に流行って、当時の主流が白黒テレビでなければアニメ化だって夢ではないといわれた、知る人ぞ知る名作だ。


 内容は一言で“勧善懲悪”。魔法使いの主人公が、ピストル片手に悪をなぎ倒すという王道。だけど正義の味方から悪役、はては脇役に世界観まで非常に厚みのある重厚なストーリーは、男女関係なく読んだ人の心に響いた。

 私もその一人で、お父さんに借りた漫画を何度も何度も繰り返し繰り返し読んでファンブックまで買い、ギリギリご存命だった原作者様にサインを貰って裏設定を教えて貰うほどどっぷりはまり込んだのは、良い思い出だ。




 さて、前置きはこのくらいにしておいて。




 なんだかんだでアラサー女子として仕事が恋人な生活を送っていたのだが、なんの因果か車にはねられて意識を飛ばした。

 次に目覚めてみれば、ばぶーでおんぎゃあな赤ちゃんボディ。おおうこれが輪廻転生かなんて感慨深く思いつつ、前世ではすっかり忘れてしまった赤ちゃん生活を、好奇心に突き動かされるまま堪能。

 せっかくの二度目の人生だ。前世のことはすっぱり忘れて今世を楽しみ尽くすことこそが、今世と前世の両親への恩返し。お金持ちに生まれたようだし、習い事も大人の要領でこなしてハイスペック新生活、なんて。



 そんな欲望まみれの私が悪かったのか。

 私が生まれた世界が悪かったのか。



 愛着持てそうな可愛らしい名前じゃん。

 そんな自分の名前への意識が吹っ飛んだのは、お金持ち幼稚園の入園式を終えた後。フルネームで書かれたネームプレートを見て驚愕した。



倉持祥子くらもちさちこ



 このフルネーム。

 もしも私があんなにどっぷりはまっていなければ見逃してしまうであろう、この名前。

 そう――“マジックガンナー猛”の登場人物に違いなかった。


 大好きな世界に転生ならば、泣いて喜ぶべきであろう。

 だがそれよりも立ちふさがるのは、物語の役割という名の現実。


 倉持祥子くらもちさちこ

 マジックガンナー猛の第二話、冒頭。謎の吸血鬼によって人々が干上がるというとんでも事件が明るみに出た切っ掛けが、猛が聞いていたラジオのニュースで倉持祥子の名前が出てくることだった。



 そう。

 最初の被害者として。



 そのことに気がついて三日寝込んだ。

 家族や兄弟におおいに心配をかけ、三日後に復活。死ぬ運命だとしたら、それはきっと私が倉持祥子になる前の倉持祥子だ。つまり私はニュー祥子。ニュー祥子なら大丈夫だと家族に宣言すると、両親も兄も私に入院を勧めた。解せぬ。


 つまり、だ。

 私はマジックガンナー猛の世界観どころか、裏設定や原作で使いどころのなかった魔法やボツになった魔法まで知り尽くしている。であるならば、私が“なれば”いいのだ。

 憧れの! マジッカー|(魔法使いのこと)に!


 そうと決まればこのニュー祥子。

 両親や兄に内緒でマジッカー……うん、もう魔法使いでいいや。魔法使いの練習に従事。設定を知っていたおかげか転生チートというやつか、魔法自体は簡単に成功。

 あとはこれでマジックガンナー猛の第二話に出てくる吸血鬼をぼこぼこにできるくらい……いや、憧れのマジックガンナー猛の仲間に入れて貰えるくらい強い魔法使いになれば私は私の人生を全うしたと、胸を張って言えるのではないか!


 そう決意した私は早かった。

 脇目を振らずに自分の道をひたすら進む。前世でも今世でも感じたことのない充実した人生が幕を開けたのだ。


 だが、その道は楽ばかりでなく、苦難の連続だった。主に人間関係で。




 そう、例えば――

















 ――ひとりは、親が引き取った義妹。


 引き取られてきた彼女は当初、人形のように無口無表情な女の子だった。

 だがそれは、裏を返せば人形のように美少女だということだ。笑えばもっと可愛くなるはずだとかまい倒し、私を見る無感動な目が虫を見るような目に変わってもかまいにかまいにかまい倒し、ついに姉妹喧嘩が勃発。


「あなたのような人間に、わたしのなにがわかるの? 力を持つ責務も知らず、能力を持つ恐怖も知らず、実の両親からも恐れられて怯えられたわたしの、なにがわかるのよ!」

「わからないわ。だけど、分かち合うことはできるわ。あなたの苦しみも、悲しみも、全部受け止めることはできる。だって、私は貴女のお姉ちゃんですもの」

「そう、なら、やってみなさいよ! 死なない程度に手加減してあげようと思っていたけど、もう、どうなってもかまわない。あんたなんか、死んじゃえ――」

「我が魔力により、我が声に応えよ……【火蜥蜴の槍サラマンドラ】!」

「――んんんっ? ちょっ、なにそれ、まっ……へぶっ!?」


 だがそれは、わたしにも姉としての威厳がある。

 謎の力で圧倒されたが、魔力を使ってはじき飛ばし、手加減して得意の炎魔法。

 マジックガンナー猛ほどスマートには決められなかったけれど、この日から、妹は心を開いてくれるようになった。








 ――ひとりは、婚約者と名乗る少年。


 彼は政略うんたらかんたらで私の婚約者に選ばれたらしい。

 というのも、妹の一件で私の魔法が両親にばれたからだ。超能力扱いされたのは不思議だが、おおらかに認めてくれたのは嬉しかった。

 さて、そんなこんなで巡り会った彼は、実に態度が悪かった。大人しくしていろとぎゅうぎゅうに絞られた私は、とにかく表情を崩さないように顔合わせの場に行ったのだが……。


「俺の能力は火を操る。おまえみたいな根暗女とは不釣り合いなんだよ」


 と、この有様だ。

 なんだ。炎魔法オンリーしか使えないとかいう落ちこぼれ自慢なの? ねぇ?

 とか言いたくなった気持ちをぎゅうぎゅうに抑えて、にこやかに会話。だが彼は、まだ公式に公開されていない私の魔法を知るはずもなく、私をとにかく無能扱い。


「おい。いつまでその不細工な顔を俺に晒す気だ。焼かれたくないなら親に泣きついて婚約を解消して貰え。……聞いているのか?」


 なんて、ここまで言われれば逆に心は達観する。

 脳内フィルターでツンデレだと思って接していたが、そうは問屋が卸さなかったのが我が可愛い妹だ。

 婚約者殿に般若の表情でつっかかろうとしたので、私が先に割って入った。


「あら、婚約解消はかまいませんが、私を焼いてしまう前に火力勝負をしませんこと?」

「はっ、貴様のような無能者が、火力勝負なんてどうやって――」

「【火蜥蜴の槍サラマンドラ】」

「――ぶべらっ!?」


 見事に宙を舞った彼は、この一件で心を入れ替えてくれるようになった。

 もっとも、対等な関係になったのはこれよりあとのこと。純粋な勝負をしただけのはずなのに、しばらくは怯えられてしまったのだけれど。ううむ、解せぬ。








 ――ひとりは、私に愛を囁く軽薄な男。


 彼は、もうほんとに唐突に現れた。

 まだたいした年齢ではないというのに、他人様の手を取って語るのは愛の言葉。だがなんだろう、中の人がアラサー女の私としては、彼の言葉は痒い。歯痒い。もぞもぞする。

 警戒する妹と、彼が接近したことで何故か私に対するおびえを払拭し、対等になった婚約者殿。それはまぁ良いのだが、彼はただ女を口説くにしては、色々と妙だった。


 だが……。


「キミの瞳は美しい。夜空を詰め込み星を浮かべた海のようだ。ぜんぶ、全部欲しいんだよ。キミのその瞳も、身体も、心でさえも!」


 この一言で確信。

 彼こそは、私が相対しなければならない敵――そう、吸血鬼だったのだ。

 その事実に気がついたときは、運命を前にして震えてしまった。だが婚約者殿が何故か私に「俺が守る」宣言。

 精神的年下の少年に励まされるという、心の底から恥ずかしい事態に陥ったことで目が覚めた。


 どうせいずれは立ち向かわなければならない敵だ。

 運命に、宿命に怯えるだけでは前には進めない。そんな簡単なことにも気がつけなかった自分が恥ずかしい。


「良いでしょう、受けて立ちますわ! 吸血鬼!」

「吸血鬼? 血でもくれるのかい? それならそれで構わない――」

「【火蜥蜴の槍サラマンドラ】」

「――さぼんっ!?」


 なんて、気合いを入れたものの、彼はなんだか弱かった。

 氷の魔法を使ってきたからことごとく蒸発させてあげただけなのに、腰を抜かしてへたり込んでしまい、おかげで私の魔法が外れてしまった。

 だけどまぁ、吸血鬼でなかったのなら外れて良かったのかも知れない。


 もっとも、この一件で私が「お化けが怖い」認定されほほえましい目で見られるようになったのだけは、本当に意味がわからないが。

 まぁ、偽吸血鬼な彼とも仲直りできたので、よしとしておうこう。おくの!








 ――ひとりは、宿命がなんたらと言い出してきた実の兄。


 幼い頃から私にベタ甘だった兄は、ある日、ひどく思い詰めた顔で帰ってきた。

 問いただしてみると、無言。まとわりつくと私を突き飛ばし、傷ついたような顔をする。私のお尻の方が痛いですわ、なんて言える空気でもなかった。

 和解するのに時間が掛かった私と違い、妹にも最初から優しかった兄。突飛な行動をとっても優しくフォローしてくれたお兄様。

 そんな兄を悩みから解放してあげたくて、調べたり婚約者殿に話を聞いたりと、四苦八苦。そうしている内に兄にフラストレーションが溜まったのか、兄は黒い靄を物理的に身体から噴射しながら私の前に現れた。


「能力者を輩出しなければ、倉持は存続できない。能力者でない倉持は、表舞台から消えなければならない。サチ……僕は君と離れたくない、なら、いっそ――」


 だがお兄様の言葉よりも、黒い靄が気になった。

 あれは確か、マジックガンナー猛の第十話で、ヒロインの一人がかけられた闇魔法。心を縛る魔法を前に、戦々恐々。

 だがそこは、原作知識持ちの知識チートを持つ私。マジックガンナー猛がどのように対処していたかを思い出すことは朝飯前。

 つまり、靄を魔力で吹き飛ばしてしまえば良いのだ。まぁお兄様への言い訳は、あれだ、“肩にゴミが付いていた”のノリで大丈夫だろう。


「む、お兄様……ゴミが身体に纏わり付いてますわよ? 【火蜥蜴の槍サラマンドラ】! あら? なにかおったしゃいましたか? お兄様」

「――あ、うん、なんでもない」


 お兄様は、この日から元のお兄様に元通り……とはいかなかった。

 なんで自分に黙っていたのか、私は両親もろともぎちぎちに絞られたのだ。時折真っ黒になるようになられたお兄様。闇魔法は消滅したのに……な、なにゆえ。








 ――ひとりは、ヒロインを名乗る電波系の少女。


 高校生になってからのことだ。

 親しい人に囲まれてそれなりに幸福に暮らしていた私の前に現れたのは、ヒロインを名乗る少女だった。

 ……うん、そう、悲しいことに電波系だ。可愛いのに。


 彼女はことあるごとに私につっかかり、時には婚約者殿に付きまとい、時にはお兄様に近づき、時には偽吸血鬼の彼を誘惑したりと大暴走。こんな若い身空で人生を評価されてしまう事態になるのはあまりに可哀想なので、フォローしたり私が前に出たりと大忙し。

 そうしている内に痺れを切らしたのだろう。光のような魔法を振りかざし、私の前に立ちふさがったのだが――。


「なんでみんなみんな、アンタのところに集まるの?! 悪役令嬢のくせに! ヒロインはあたしなの! あたしの思うとおりならない世界なんて、壊れてしまえばいいんだわ!」


 この言葉で、私は天啓を得た。

 みんなご存知のとおり、マジックガンナー猛には“ひとは誰しも宿敵を持つ”という設定がある。この感慨深い設定を忘れたことがなかった私は、思わず彼女に問いかけた。


「私と相対する……そう、貴女が私のライバルポジションだったのですね」

「そうよ! そしてその場に立つのはあたしのはずなのに、なんで、なんでよ!」


 そして、こうした問いかけは前例を見る限り否定され続けてきた私としては、実に胸が躍る言葉を放ってくれたのだ。

 彼女こそが、私の宿敵。私が戦う、宿命のライバル。そう聞いて、心が躍らないマジックガンナー猛ファンがいるだろうか。いや、いない。


「わかりあえないのなら決闘よ。【火蜥蜴の槍サラマンドラ】――うん、今日も絶好調ですわ。さぁ、戦いましょう」

「うん、ごめんね、落ち着いたわ。話し合い――」

「問答無用! 全力、【火蜥蜴の槍サラマンドラ】!」

「――まそっぷ!?」


 彼女とは血と涙と汗と笑顔で和解。

 宿命のライバルが、戦いの末に手を取り合うという胸熱展開に私歓喜。


「誰しもが、誰かの主人公で誰かの脇役よ。それは、私が誰よりもよく知っているのだと自負できますわ。だから胸を張りなさい。貴女は貴女の世界の主人公で――私の世界の、掛け替えのないひとよ」

「掛け替えのない、ひと……。は、ははっ、なんだ、あたしはずっと誰かに、そう言って欲しかっただけなんだ……」


 女の友情ってすばらしい。

 すばらしいのだけれど、何故か彼女は私を肉食獣のようなぎらぎらした目で見ることがあるのは、何故なのだろうか。

 うーん……やはりライバルだからだろうか。








 ――ひとりは、自称魔王の中二病青年。


 なんだかんだで平和な日々を過ごしていたときのことだ。

 気がつけば月と太陽が同時に昇るびっくり空間に迷い込んでいた。

 これはマジックガンナー猛の第八話でいうところの、迷宮魔法というやつだろうか。うっかり敵の手中に落ちるとは、なんたる未熟。


「――今宵も、世界が終わる。この歪に膨らんだ世界を崩し、新生を謳おう。本来の箍は外れた。枷ももうない。さぁ、宿命づけられた救世主でない君に、いったい何ができる? いや、問いかけに意味は無い。意義ならある。我が星の魔王である限り」


 閉じ込めて放置してその間に仲間を襲う気なのかと戦々恐々としていた私だったが、突如現れた青年に、思わず固まってしまった。え? 魔王っていった?

 もういい年に見えるのに、このひとは中二病なのだ。そう思うと、目を逸らさずにいられない自分が居た。うん、なんかごめん。


「魔王からの問いだ。勇者に成り代わった少女よ。悪になり損ねた人間よ。運命に導かれるままにこの場に訪れ、宿命に従いその命を散らそうとする存在よ。君はなにを望む? 何を得る? 何を託すことができる? さぁ、問いかけに応えよ。人間よ。汝の使命さだめは何処にある? さぁ応えよ、矮小なる人間よ」


 なにか言いたいことがあるようなのだが、さすがは中二病。

 言いたいことの一割もわからず、思わず話をぶった切る。


「話が長いわ」

「そうか、ならば語らうことはもうない。先手は譲ろう。だからこの憐れな魔王に、絶望の歌を聴かせておくれ――」


 瞑目し、私を可哀想な者を見る目で見る自称魔王。

 というか、これから楽しい楽しいクリスマスパーティーだというのに、こんなのに捕まってこんなのに憐れまれるという現状は、如何に温厚で度量の深い私といえど腹に据えかねるものがある。

 先手は譲ってくれると言うし、泣いて謝るまで終わらせないと決意を込めて、思い切り魔力を高めた。


「【火蜥蜴の槍サラマンドラ】」

「ぐふっ! や、やるじゃない――」

「【火蜥蜴の槍サラマンドラ】」

「がはっ、ごほっ! ふ、ふふ、こんな力が――」

「【火蜥蜴の槍サラマンドラ】」

「ま、まて、そうだ、世界の半分をんぎゅふっ!?」

「【火蜥蜴の槍サラマンドラ】」

「ま、まってくださ――」

「【火蜥蜴の槍サラマンドラ】」

「――ぎゃふんっ!?」


 と、泣くまで続けて、気が乗ったので気絶するまで+αしたら結界が解けたので意気揚々と帰宅。

 一時間しか経っていないことに喜んだが、結局帰って心配され、怒られてしまった。こうも思ってくれることは嬉しいのだが、なんだか理不尽にも思ったので、今度あの自称魔王に遭遇したら+βくらい魔法を打ち込んでも許されることだろう。




















 そんなこんなで、気がつけば、私の周りはいつも賑やかになっていた。

 これも私の努力の成果だろう。そう思うとこそばゆいような、面はゆいような気持ちになる。


 ――瑠璃色の髪を携えた義妹に微笑まれ。


「ふふふ、お姉さまは今日も可愛いわ」


 ――赤い髪の婚約者殿にのしかかられ。


「おい、祥子から離れろ。俺の婚約者だぞ」


 ――青い髪の偽吸血鬼に手をとられ。


「なんとも思われてない癖にかい? ああ、祥子。君の瞳は美しい」


 ――亜麻色の髪の美少女に抱きつかれ。


「ちょっと! サチになれなれしくしないでよ!」


 ――私と同じ黒髪の兄が周りを遠ざけ。


「ほら、サチが迷惑しているだろう。家族以外は消えて貰えるかな?」


 ――幾度となくぼこぼこにした銀髪の魔王に傅かれ。


「我が運命のひとよ、どうか我が愛に応えておくれ」




 う、嬉しいよ? うん。……うん。

 ただ、ちょっとみんな個性的過ぎて、脳みそが追いついてこないだけで。

 ……あ、あれ? どうしてこうなったんだっけ? ま、まあいいか!







 さて。

 艱難辛苦を乗り越えて、酸いも甘いも体験した。残念ながら吸血鬼は偽物だったのだけれど、前よりももっと強くなった今ならば本物の吸血鬼だって返り討ちにできるはずだ。

 だからこそ、気になる。


「原作って、いつ始まるんだっけ?」


 できれば私がおばあちゃんになって枯れ果ててしまう前に、原作が始まって欲しいのだが……うーん。






 まぁ、いざとなればなんとかしよう。

 今の私には、頼れる仲間も友達も、愛しい家族もいる。

 そしてなによりこの、前世で憧れた魔法の力があるのだから!





【用語解説】


『マジックガンナー猛』

昭和初期に流行った少年漫画。魔法使いである主人公、猛が苦難を乗り越えて敵を倒し、世界の真実に迫る。個性的なキャラクターと深い世界観。当時としては珍しいギリシャ語の魔法が人気を呼んだ。


『ロア ~籠の蝶~』

ごくごく一般的な女の子の間に大ブームを起こした乙女ゲーム。昏く官能的なストーリーと、男性でも楽しむことができる“超能力バトル”要素が人気を呼びセカンドシーズンやファンディスクだけでなく、格闘ゲームまで発売された。


倉持祥子くらもちさちこ

本作主人公。黒のロングストレートに黒い瞳。

若い世代にはどマイナーな少年漫画の世界に転生したと思い込んだ、少年漫画の被害者と同姓同名なだけの乙女ゲームの悪役令嬢。本来ならば婚約者を巡ってヒロインを苛め、断罪。彷徨っていたところを魔王に襲われて死んでしまう。だが、前世に目覚めたことで一変。世界をくぐり抜けて転生を果たしたことで魔法使いの資質が開花。世界で唯一の魔法使いとなるが、彼女はまだマジックガンナー猛が存在していると信じて疑わない。


美条彩花みじょうあやか

乙女ゲームのヒロイン。亜麻色のゆるふわウェーブに鳶色の瞳。

“ロア”のヒロインとして転生した少女。超能力者としてのスペックを上げ、やりうる転生チートの全てを行使してパーフェクトなヒロインになって、原作の舞台となる高等学校へ入学。悪役令嬢にだけ気をつけて男の子たちを攻略しようとしていたら、アホの子な癖に攻略対象たちに囲まれている悪役令嬢を発見。濡れ衣を着せようにも超能力とは違う謎の技術で躱されて、我慢できなくなり突貫。返り討ちに遭う。祥子のアラサー的な意味での度量の深さに惚れ込み、祥子のアホの子な一面をサポートする友となることを決意した。


陽宮旭輝ひみやあさき

メイン攻略対象。赤髪赤目。俺様。

原作では孤高の王子。名門の優秀な発火能力者であるがゆえに家族にも怯えられ、孤独な毎日を過ごしていた。原作ではまとわりつく祥子に嫌気が差して彼女を突き放すが、ニュー祥子に俺様な態度は通用せず、天然気味な祥子の第二の保護者のようなポジションに落ち着く。


倉持境夜くらもちきょうや

攻略対象。黒髪黒目。

原作では、万能の能力者と謳われる倉持のプレッシャーに押しつぶされていたところを、ヒロインに救われる。兄として妹を更正させることができず苦しむ、優しい少年。だが、本作ではぶっ飛んだ妹に振り回され、覚醒。負の力をコントロールしきれず暴走しかけるものの、即鎮圧。両親が突飛すぎる妹の力を知ってしまったら歪んでしまうのではないかと心配して彼に話さなかったようだが、全て解決した後で「なるほど確かに」と心穏やかに思う彼がいたそうな。


倉持響子くらもちきょうこ

ライバルキャラ。瑠璃色の髪と目。

原作では、笑うことも怒ることもない少女。境夜攻略ルートで立ちふさがる。実の両親から怯えられて捨てられた、倉持分家の娘。表情を閉ざしたままながらも、自分に優しくしてくれた両親と兄をヒロインに取られると祥子に唆されて、敵対する。が、本作ではその祥子に心をこじ開けられ、本来の優しい少女としての一面が浮上した。


月上桂つきがみけい

攻略対象。青髪碧眼。

原作では、響子の婚約者。家に命じられ、ヒロインの能力を調べるために彼女に近づいた。軽薄そうに装っているが、本来は冷酷な性格。ヒロインに惹かれていく内に月上としての宿命の狭間に溺れ、ヤンデレとなっていく。本作でも調べる対象が祥子に変わっただけで同じように彼女に惹かれていくが、ヤンデレ心は物理的に粉砕されて、ただの甘えん坊キャラに変わった。


『シリウス』

攻略対象。隠しキャラ。魔王。

原作では世界をリセットする魔王として現れる。そのため複数の平行世界の記憶を持ち合わせる。原作では本来ならば乗り越えられない未来を乗り越えたヒロインに心を惹かれる。彼とのエンディングは世界に二人きりという、ある意味ではバッドエンドでトゥルーエンドとされている。本作ではあり得ない能力と性格を持ってきた祥子に興味を持ち、敗北し「自分はちっぽけな存在だったんだ」と覚醒してはならない方向に覚醒。彼女を至上の主として崇め、隙あらば持ち帰ろうとし、彼女自身にぼこぼこにされている。最早、吹き飛ぶまでが彼のライフワークであることは、いうまでもないだろう。

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― 新着の感想 ―
[一言] ん?シリウス?…Dies…水銀…ニート…うっ、頭が。
[一言] えええええ!? まさかの世界が違う!? こんな設定始めてみましたw
[気になる点] 昭和初期だと太平洋戦争辺りかそれよりも前になってしまうので、流石に昔すぎると思いました。 (昭和元年が1926年、太平洋戦争が1941年から1945年) [一言] 別作品の能力を勘違い…
2020/12/12 05:20 トーリスガリ
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