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長屋の料亭  作者: クロハ
2/2

遭〜思わぬ出会い

(とりあえず、辺りの様子とか知らないと話にならないな)


俺、一條那月(いちじょうなつき)は、とある理由で死んだ人間だ。

てことは、ここは天国?それとも地獄?いや、どちらでもない。

この世界は、あの少女、九重(ここのえ)が言うには、[不遇な人生を歩いた人々の悔いを無くすためのもう一つの人生] だそうだ。



まずは、自分がいた建物から探索することにした。那月が寝ていた場所は畳が15枚敷かれており、とても広いところからおそらく居間であろう。その中央辺り、那月が寝ていた場所にケータイが落ちていた。

(やべ、寝てる時にケータイ落としてた)

ケータイを拾い、ズボンのポケットに入れようとしたら突然知らない番号から着信が来た。 那月は恐る恐る電話に出た。

「もしもし?」

「おお、那月か?九重(ここのえ)よ」

電話の主は那月も知っている九重だった。

「どうだ?今いる家は?」

「どうって、まだ見てない。今から見てみるよ」

「いったい今まで何してたのよ」

「寝てたよ。夢だと思ったからね」

九重は小さくため息をついたが、まあいいわ、と許した

「それじゃあ、電話しながらでも案内でもするわ」

「その前にいくつか聞きたいことが…」

がららららら…

そのとき、扉(がらがらと音がなっているので、おそらく引き違い扉なのだろう)が開き、誰かが入る足音が聞き取れた。

那月は少しパニックになり、九重に対して素っ頓狂な質問を投げかけてしまった。

「誰か入ってきたんだけど、どうすればいい?」

「どうって…普通に話したらいいじゃない。…それとも、いわゆるコミュ障とか?」

やはり呆れ返った返事が帰ってきた。それどころか中傷さえされてしまった。

「コミュ障ではないとは思うけど、それに近いかもな」

「え?」

「なんてね、一回切るぞ。また後でこっちからかける」

「ちょっと、まちなさ…」

ツー…ツー…ツー…


「さてと、どんな人が来たのかな?」

那月は扉の開く音がした方向に向かい、静かに歩き出した。


「くそ、別にいいじゃねぇかよ。夢の為なんだからさぁ」

那月が音のした部屋に近づくと、男の声がした。

息を切らしながら言ってるところから、誰かに追われてるのだろうと那月は解釈した。

しばらく男の動向を伺ったが、特に動く様子もなかった。

(あー、向こうから話しかけてきてくれないかな。…それは無いか。やだなー)

那月は意を決して男のいる部屋に出て、話しかけた。

「どちら様でしょうか?」

その部屋は少し広めだった。部屋の隅にはテーブルや椅子が寄せられていて、那月が出てきた通路の目の前にはかなり立派な調理場があった。

男は人がいたのにびっくりしてるのか、しばらく驚きの表情を浮かべ続けた。

「…人がおったんかい。いや、すまんの。人がいないと思っとったもんじゃからな、こう、わかるやろ?」

本人も相当焦っているのだろう。説明がかなりアバウトだ。

「えーと…。あ、名前聞かれてたんやったな。ワイは眞壁泰人(まかべやすと)じゃ。気楽にヤスと呼んでくれ。そんでもって、いきなりじゃが、しばらくかくまってくれん?追われとんのじゃ、わし」

眞壁泰人と名乗る男は、那月が解釈した通り、追われてるそうだ。

「いったいどうして追われてるんですか?」

「敬語なんていらんいらん!崩して言えや」

しばらくたっても泰人は答えなかったので、那月は再び聞いて見た。今度は崩して言って。

「えっと、なんで追われてるの?」

すると泰人はにこ〜と笑い、答えてくれた。

「実はな、ワイの夢のためなんや」

泰人は隅に置いてあった椅子を置いて座り、話を続けた。

「ワイの夢はな、人を笑顔に出来る食堂を作ることなんや」

(夢…か。俺にもあったな)

那月も生前は生きており、夢も抱いていた。

(まあ、今となっては関係ないか)

那月が生前のことを少し思い出している間にも、泰人の話は続いた。

「そこで、周りの奴らに頼んだんだよ。でも、借金持ってる奴の話なんて誰も聞くわけない。親父も呆れを通り越して怒っちまってこの状況になったのさ」

(そうか、誰でも苦しい時はあるんだな。…なんで俺は死んだんだっけな)

那月は、泰人の話と自分の過去を重ね合わせた。泰人はこうも前を向き続けて今があるのに、俺はなんで前を向かなかったんだろうか。そう考えると全く止まらなかった。


「そこでだ、お前に協力して欲しいんだ」

「協力ねぇ……はぁ!?」

泰人の言葉でぐるぐると回り続けていた思考は止まったが、那月は素っ頓狂な声を上げた。

「きょ、協力ってなにを?」

「んなもん決まっとるやないか。食堂を一緒にやってくれや」

「なんで俺が協力するんだよ?他に頼れるのは…」

那月はさっき泰人が言った言葉を思い出し、言葉を切った。

(そうか、誰も頼れる奴はいないんだっけ)

泰人はこちらを期待の眼差しで見つめている。

「はぁ…わかった。で、俺は何をすればいいんだ?」

「おっし、ありがとうな。えーと…」

「あ、ゴメン。俺は一條那月だ」

「よっしゃ、那月やな。それでだ、お前料理できるか?」

「え、ああ、うん。レシピさえあればなんとか…」

「ほいじゃ、那月が飯作ってくれ。ワイは材料とか集めるから」

「え、俺は泰人さんの手伝いじゃないの?」

「は?」

しばらく沈黙が広々とした部屋を包んだ。泰人は思い出したかのようにヤスって呼べよとか言ったが、沈黙は続いた。

「え、ですから、俺は…ヤスさんの手伝いじゃないの?」

「いやいや、それはないって」

「はぁっ⁈ ちょっ、え、何で⁇」

那月は少しパニックになった。反対に泰人は当たり前のような涼しい顔をしていた。

「那月よ。お前、ワイが料理できそうに見えるか?」

その言葉で那月は理解したくもない事実を理解した。

「ワイ、料理できへんよ」

「なんだそりゃー〜〜〜〜‼︎‼︎‼︎」

夏の日差しの中、青年の悲痛な絶叫がこだました。

みなさん、初めまして。もしくは、おはこんばんにちは!作者ことクロハ/cionです。

この場をお借りして、更新ペースを伝えようと思います。

1ヶ月に一度、毎月10日に最新話を投稿するつもりです。

しかし、私は学生なので、やれテストやら、やれ部活やらで忙しく、日付が変更になったり、文字数が変わったりしてしまいます。

そこのところはとても寛容な心の読者様にご理解をお願い致します。

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